今年は暖冬といわれていますが、近ごろは厳しい寒さが続いています。
冬になると、これまでしていた運動を「寒いから」「冬はすぐに外が暗くなるから」という理由で行わなくなり、家に籠る時間が増える人も少なくないのではないでしょうか。
今回は、活動量が低下することで生じる健康への影響についてお伝えします。

座りっぱなしにより死亡のリスクが高くなる?

皆さんは1日のなかでどれくらいの時間座って過ごしていますか?
コロナ禍からリモートワークが増えていたり、冬は寒さで家に籠ってしまったり、ずっと座って過ごしている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、日本人は世界一椅子に座っている時間が長いことが研究から明らかになっています。
そこで注意していただきたいのが、座りっぱなしが私たちの健康にもたらす影響です。

各国の研究から、座ったままの時間が長いと血行不良や代謝の低下を引き起こし、循環器疾患や死亡リスクの増加につながることが報告されています。
日本の研究でも、高血圧や脂質異常症、糖尿病の有無にかかわらず、日中の座位時間と死亡率に関係があることが明らかになりました。

座りっぱなしによって生じる血行不良はどのような影響をもたらす?

飛行機によく乗る方は「エコノミークラス症候群」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
これは本来、「急性肺血栓塞栓症」という疾患なのですが、長時間椅子に座っていることによって発症するため、このような名前が付いたといわれています。
この疾患では、長時間狭い座席で同じ姿勢で過ごすことで、心臓に戻るはずの血液がふくらはぎに滞り、血流が悪くなるため、血の塊(血栓)が生じるリスクが高くなります。
そして、その血栓が肺の静脈に流れ、詰まらせてしまうことで、息苦しさや胸痛、冷や汗、失神、動悸などの症状を引き起こします。
場合によっては命にかかわることもあり注意しなければなりません。
このエコノミークラス症候群は、長時間同じ体勢で座っていることで発症するため、オフィスなどの身近な場面でも、長時間のデスクワークで座りっぱなしになっていると起こる可能性が高くなります。

血行不良を予防しよう!

日ごろから対策を行い、血行不良によるさまざまな症状が現れることがないよう工夫していきましょう!

①積極的に水分を摂取しましょう!
血行不良になる要因の一つとして水分不足が挙げられます。
特に、冬は喉の渇きを感じにくいため、あまり水分を摂らないことや、空気の乾燥により不感蒸泄(皮膚や粘膜から水分を失う)が増えるため、隠れ脱水に陥っている方が多くいます。
血液の水分量が少なくなると、血液がどろどろの状態になり、血液の塊が作られやすくなってしまいます。
そのため、日常生活の中でこまめな水分補給を心がけましょう。
コーヒーやお茶などカフェインを含むものは利尿作用があり、水分を体外に排出させてしまうため、「コーヒーやお茶を飲んでいるから水分は足りている」と考えずに、注意していく必要があります。

②長時間座りっぱなしにならない工夫をしよう!
 厚生労働省は「第3回健康づくりのための身体活動基準・指標の改定に関する検討会」の資料として「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(案)」を公表しました。
ガイド内では、日本人の現状を踏まえた身体活動・運動の推奨事項だけでなく、新たに座位行動という概念が取り入れられ、じっとしている時間が長くならないよう体を動かすことを推奨しています。

座位に限らず、長時間同じ姿勢でいることはよくありません。
体操やストレッチを行うなど、定期的に姿勢を変えて同じ姿勢が続かないように工夫しましょう。
また、デスクワークなど座っている状態が続く場合でも、30分に1度は立ち上がるなど、同じ姿勢をとり続けないことが大切です。
「足が浮腫んできたな」と感じたときは、ふくらはぎのマッサージや足を上下する運動を取り入れて、ふくらはぎの血流が滞らないようにしましょう。

  まずは、推奨量を目指して運動を行い、仕事中などの座位時間には座位行動を取り入れて、じっとしている時間が長くならないよう注意していきましょう。

<参考>
・ 島岡章、町田和彦、熊江隆、菅原和夫、倉掛重精、岡村 典慶、末宗淳二郎「基礎代謝の季節変動について」(『日本生気象学会雑誌』1987年、24(1)、p.3-8)
・ 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(案)」
・ Teruhide Koyama et al.「Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study」(『Journal of the American Heart Association』2021年6月14日)