新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスを筆頭に、冬はさまざまなウイルス、細菌による感染症が増える時期です。
ウイルスや細菌が口や鼻から体内に侵入することを止めることはできませんが、自分自身の免疫機能を高めて感染症の発症を抑えることはできます。
免疫機能を高める方法はいくつかありますが、今回はぜひ皆さんにとってほしいビタミンDについて解説します。

免疫機能(免疫力)ってなに?

何気ない会話やテレビなどで「免疫力」という言葉をよく耳にすると思います。
「免疫力」は医学的、学問的な言葉ではありませんが、多くの方が「感染症にかかりにくい=免疫力が高い」と解釈しているのではないでしょうか。
(ここでは免疫機能という言葉を使用して説明します) 「免疫機能」とは、外から侵入したウイルスや細菌、体内で発生したがん細胞を常に監視し撃退する自己防衛システムのようなものです。
実は健康な人でも毎日5,000個もがん細胞ができるという研究結果があります。
ですが、全員ががんを発症するとは限りませんよね。
それは身体の中でがん細胞と戦ってくれる免疫細胞が関係しているからです。
私たちを体内外のさまざまな脅威から守るために免疫機能が備わっていますが、体力や視力、聴力などの能力と同様、年齢とともに衰えていきます。
免疫機能が低下すると、若い頃は簡単に治っていた、軽症で済んだ風邪もなかなか治らない、重症化してしまったというようなことが起こりえます。
加齢とともに免疫機能が低下するという事実に対して完全にあらがうことはできませんが、免疫機能を正しく機能させるためにできることはあります。

<免疫機能を高める方法>
・ 栄養バランスの良い食事をとる
・ 腸内環境を整える
・ ストレスをため過ぎない
・ 適度な運動をする
・ 入浴し身体を温める
・ 笑う(作り笑いでも効果あり) など

ビタミンDとは?

栄養バランスが良いと自然と腸内環境も良くなってきます。
そこでぜひとり入れてほしい栄養素がビタミンDです。
ビタミンとは、私たちの身体に欠かすことのできない五大栄養素のひとつです。
全部で13種類あり、体内の調子を整える働きをしています。
ビタミンは体内でほとんど合成することができないため、食物から摂取する必要があります。
ビタミンDは水に溶けにくく油に溶けやすい脂溶性ビタミンのひとつです。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの吸収を助けたり、筋肉の合成を促進したりします。
免疫機能の調整にも関わります。
また、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患、2型糖尿病などさまざまな病気の予防にも関連しているといわれています。
ビタミンは体内でほとんど合成することができないと説明しましたが、ビタミンDは日光を浴びることにより、体内で合成することができる特殊なビタミンです。
ビタミンDが極端に不足すると、血中カルシウム・リンが低下するため、くる病(小児期に骨が軟化する)、骨軟化症(成人期に骨が軟化する)などの重大な合併症を引き起こします。
東京慈恵会医科大学から、「日本人の98%がビタミンD不足に陥っている」という驚きの研究結果が出ています。
上記の重大な合併症を起こすほどの不足ではありませんが、常に不足している状態の方が多いようです。
食事からのビタミンDの摂取が多い人は、循環器疾患の発症を予防でき、結果として死亡リスク低下につながるという調査もあり、ビタミンDは感染症や生活習慣病予防のために、非常に重要な栄養素のひとつといえます。

積極的にビタミンDをとり入れよう!

1日に必要なビタミンDの量は成人で8.5μg以上(上限100μg)といわれています。
ビタミンD不足を解消するために、以下をとり入れましょう。

日光浴をする

ビタミンDは日光浴(紫外線を浴びる)で生成されます。
外出する機会が少ない方は、余計に不足してしまいます。
窓を開けたり外へ出たりして皮膚に日光を当てましょう。
季節や地域にもよって差があり、冬は長時間必要な場合もあり難しい地域もありますが、夏は5〜10分程度浴びることで、ビタミンDの生成を十分促せます。
ただし、日光を極端に浴びると、皮膚が乾燥しシワやシミの原因になるため注意が必要です。

ビタミンDが多く含まれる食品を積極的にとる


ビタミンDは、野菜や穀物、イモ類、豆にはほとんど含まれていません。
多く含まれているのは魚類とキノコ類です。
特に魚はビタミンDが豊富に入っています。
そのため、魚を食べる機会が少ない方は要注意です。
外食やコンビニ食は、つい肉類が多くなりがちなので、意識的に選ぶようにしましょう。
また、ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、脂質と一緒にとることでより吸収しやすくなります。
ごま油やオリーブオイルで炒めたり、きのこスープに垂らしたりして食べるのがオススメです。
ぜひ積極的にとり入れましょう。
ビタミンD含有量(μg/100gあたり)
サケ:32
イワシ:32
マグロ:18
ウナギ:18
サンマ:16
サバの缶詰(水煮):11
キクラゲ(乾燥を茹でたもの):8.8
干しシイタケ(乾燥を茹でたもの):1.4
エリンギ:1.2
エノキダケ:0.9
ブナシメジ:0.5
生シイタケ:0.3

<参考>
・ 学校法人慈恵大学「98%の日本人が「ビタミンD不足」に該当」
・ Akiko Nanri、Tetsuya Mizoue、Atsushi Goto、Mitsuhiko Noda、Norie Sawada、Shoichiro Tsugane(Japan Public Health Center-based Prospective Study Group)「Vitamin D intake and all-cause and cause-specific mortality in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based prospective study」(『European Journal of Epidemiology』2023年1月)
・ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」