2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震で被災された皆さまへ、心よりお見舞い申し上げます。
今回の災害で、改めて備蓄の重要性や、今の備えへの不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
災害用の備蓄は誰にとっても重要ですが、アレルギーを持つご家族がいる場合にはさらに配慮が必要です。
本記事では、災害時にアレルギー症状を起こさないための備えについてお伝えします。

アレルギー対応食品の備蓄は2週間分


災害時、食物アレルギー対応食品は手に入りにくい可能性があります。
2011年に発生した東日本大震災後に、食物アレルギー患児の保護者(宮城県在住)を対象に実施したアンケート調査では、「アレルギー対応食品が1週間以上手に入らなかった」が回答の半数以上を占めました(※3)。
配布食料や炊き出しにアレルギーの原因食品(以後「アレルゲン」と表記)が入っている可能性も想定して、食料は自分で用意した備蓄品でまかなえるように備えておきたいですね。
アレルギー対応の非常食は2週間分用意するのが望ましいです。

災害時に備えて今からできること


(1) 必要なものを用意する
アレルギーをお持ちのご家族がいる場合、通常の避難グッズに加えて以下の3点は特に配慮して備えましょう。

1. アレルギー対応の非常食
非常時はライフラインがいつ使えるようになるかわかりません。
加熱や調理をしなくてもそのまま食べられるレトルト食品や、お皿がなくても食べられる缶詰などを選びましょう。
しかし、そういったものを2週間分揃えると荷物が重くなりすぎたり、かさばったりしやすいです。
粉末スープやアルファ化米、乾燥ワカメなどの、水があれば食べられる食品と組み合わせると、持ち運びの負担が減ります。
離乳食の場合は、お子さんの成長に合わせて非常食の入れ替えも忘れず行いましょう。

2. 食物アレルギーを他者に知らせるもの
アレルギーをお持ちの方が幼いお子さんの場合、必ずしも近くに保護者がいられるとは限りません。
一目でアレルギーであることが他者にわかると安心です。
必要な情報を記載した、カードやバッジなどを用意しましょう。
アレルゲンのほか、緊急時の対応方法や保護者・かかりつけ病院の連絡先なども記載しておくのが望ましいです。

3. 普段使用している薬
エピペンをお持ちであれば、本人が携帯できるベルト付きのポーチなどとともに揃えておくとよいでしょう。
アトピー性皮膚炎や、ハウスダストアレルギーなども併せ持っている場合は、避難先の環境やストレスによって症状が悪化する可能性もあります。
普段使用している薬があれば、避難袋に多めに入れておくか、すぐに持ち出せるようにポーチにまとめておきましょう。
症状を少しでも和らげるために、体をふくためのウェットティッシュやマスクも多めに用意するとよいですね。

(2) (お子さんの場合)非常食を食べ慣れさせておく
子どもは環境の変化に敏感で、普段と場所が変わるだけで食が進まなくなることもあります。
常時と大きく異なる環境では、慣れていない非常食を食べてくれない可能性があります。
非常時も拒否感なく食べてもらえるよう、普段から非常食を食べる機会を作りましょう。
古いものから消費して、消費したら新しいものを買い足す「ローリングストック法」を取り入れると、期限に合わせて食品を入れ替えながら、お子さんにも非常食を試してもらえます。
そのうえで、どうしても苦手な食品があれば、他の非常食への変更も検討できます。
また、初めての食品を食べる時は、新たなアレルギー発覚の可能性があるタイミングでもあります。
災害時にそのリスクを回避するためにも、平常時に非常食を食べておくのは有効です。

(3) (お子さんの場合)こまめに受診し、アレルギーの程度を把握する
お子さんのアレルギーの場合、消化器官の発達によってアレルギーの程度が少しずつ軽くなることも多いです。
たとえば乳製品アレルギーで、初めて症状が出た時には数ミリリットルの牛乳で症状が出ても、負荷試験を経ることで、1年後には50ミリリットル程度摂取できるようになる場合もあります。
乳製品を含んだ加工品など食べられるものが増えることで、災害時に摂取できる食品の幅が広がります。
選択肢を広げるためにも、かかりつけ医の指示に従ってこまめに受診をして、アレルギーの程度を把握しましょう。

(4) (お子さんの場合)「食べるものは保護者に確認」を習慣づける
お子さんが会話をできる年頃であれば、食べるものにアレルゲンが入っていないか保護者に確認することを普段から習慣にしましょう。
お子さん自身に自衛の手段を持ってもらうことでリスクを減らせます。
また避難生活が長く続くと、保護者でも疲労によって確認ミスが起こる可能性があります。
できるだけ2人以上で食事にアレルゲンが入っていないかを確認できると安心です。

“万が一”を起こさない

災害時は停電、断水、道路分断などによって通常通りの医療が機能しないこともあります。
アレルギーがある方に“万が一”が起こらないよう、しっかり準備することが大切です。
災害はいつ起こるかわかりません。
もし、「まだ非常食も準備していない」というご家庭があれば、ぜひ今日から始めましょう。

<参考>
※1 一般社団法人日本小児臨床アレルギー学会『アレルギー疾患のこどものための「災害の備え」パンフレット』
※2 農林水産省『要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド』
※3 箕浦貴則、柳田紀之、渡邊庸平、山岡 明子、三浦克志「東日本大震災による宮城県における食物アレルギー患児の被災状況に関する検討」(一般社団法人日本アレルギー学会『アレルギー』2012 年61巻5号、642〜651頁)
※4 一般社団法人LFAJapan『アレルギーっ子ママが考えた防災ハンドブック』