2023年12月25日、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、経団連)は「上場企業役員ジェンダー・バランスに関する経団連会員企業調査結果」(以下、本調査結果)を発表しました。
この調査は、上場企業における女性役員が占める割合について調査したものです。 調査名にも入っている「ジェンダー・バランス」とは、「男女の賃金格差、昇進格差をなくし、男女の採用の公平性を取ること」を指します(一般社団法人パートナーシップ協会)。
今回は、本調査結果についてわかりやすく解説します。

政府目標は2030年までに30%

本調査結果の前に、まず、国が定めた目標をを見ていきます。
2020年12月25日に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」では、2022年を期限とし、東証一部上場企業役員における女性の割合12%を目標と定めていました。
その後、男女共同参画会議(2023年12月25日)で答申された、あらたな成果目標では、東証プライム市場上場企業役員における女性の割合を、2025年までに19%、2030年までに30%とすること、また東証プライム市場上場企業のうち 女性の役員が登用されていない企業の割合0%を目標として定めています。
ここでいう役員には、取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員またはそれに準じる役職者も含むとしています。

東証プライム市場上場企業では、女性役員13.3%

本調査結果によると、東証プライム市場上場企業役員における女性の割合は、2023年時点で13.3%でした(経団連会員企業は14.1%)。
さらに政府目標「2030年までに30%」に賛同する企業においては、女性役員の割合が17.6%であることがわかりました。
一方で、東証プライム市場上場企業全体で、女性役員が登用されていない企業は11.0%でした(経団連会員企業では5.2%)。

出所:一般社団法人経済団体連合会「上場企業役員ジェンダー・バランスに関する経団連会員企業調査結果」

全上場企業で女性役員比率が最も高いのは「石油・石炭製品」

さらに、業種別にみると、全上場企業のうち女性役員比率が高いのは「石油・石炭製品」13.8%、「保険業」13.8%、「医薬品」15.2%でした。
また、経団連庁舎対象企業では「保険業」20.5%、「石油・石炭製品」20.4%、「証券、商品先物取引業」19.8%でした。

出所:一般社団法人経済団体連合会「上場企業役員ジェンダー・バランスに関する経団連会員企業調査結果」

役員の中には経営者以外にも、弁護士・公認会計士といった、コアスキルを持った人もいます。
実際、女性役員のおよそ3割近くは弁護士として役員登用されていることがわかり、これは経営者として登用されている割合を上回っています。

今後の課題

本調査結果を踏まえ、経団連は今後の課題と取り組みについて以下の3つを挙げています。
・ 取締役・監査役・執行役・執行役員のダイバーシティの進化による「イノベーティブな意思決定や業務執行」と「多角的な観点からの監督・監査」の推進(性別、人種・国籍、障害の有無はじめ様々な属性・多様な価値観の包摂)
・ 女性登用の遅れている業種・業態でのダイバーシティへの理解推進
・ 社内人材(特に男性以外)の育成と役員登用(タレントパイプラインの強化)
出所:一般社団法人経済団体連合会「上場企業役員ジェンダー・バランスに関する経団連会員企業調査結果」
女性にとどまらず様々な属性の方を役員に登用することで、経営に新たな視点が加わり、働きやすい環境の実現可能性が高まります。
今後どのような業種においても、こうした多様な方々の役員登用が増えることを期待します。

<参考>
一般社団法人経済団体連合会「上場企業役員ジェンダー・バランスに関する経団連会員企業調査結果」