大型連休の真っ最中。今年1月〜4月末までに多く読まれた記事を紹介します。見逃していた記事も「こんなことがあった」という話題も、ぜひご覧ください(この記事は「AERA dot.」で2024年1月23日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のもの)。
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皇居・宮殿で元日に執り行われた「新年祝賀の儀」では、女性皇族が4年ぶりにティアラを着用して臨んだ。ティアラは、女性皇族方の正礼装の装身具である宝冠のため、着用する機会は限られる。そんな貴重な女性皇族の美しいティアラ姿を振り返ってみる。
女性皇族の顔の上で光り輝くティアラ。「ハレの日」の正礼装であるため、見ることができる日は限られる。
新年、元日に執り行われた「新年祝賀の儀」では、4年ぶりにローブデコルテのドレスに身を包んだ女性皇族がティアラをつけた。
1月1日の早朝、東京・皇居の半蔵門や赤坂御用地の周辺には、新年のあいさつのために出入りする皇族の姿を見ようという人たちの姿があった。
特にお目当てなのは、貴重なティアラ姿の女性皇族だ。
半蔵門前で早朝から待っていたという女性は、天皇、皇后両陛下の長女の愛子さまの姿を見ることができ、上気した表情で話した。
「愛子さまは昨年、儀式でお召しのローブデコルテから袖のあるモンタントに着替えて、両陛下と仙洞御所へごあいさつのために訪問されました。今年はなぜか、愛子さまおひとりでしたが、ティアラとローブデコルテ姿のままでしたので、皇族方の正礼装を見ることができて、感激です」
■ティアラは誰の所有物か
愛子さまが着用していたのは、叔母の黒田清子さんから借りたティアラ。清子さんが内親王としての成年を迎えるにあたり、私的なお金であるお手元金で制作したものだ。
明治以降の近代皇室においては、天皇家も宮家も相応の財産を持っていたこともあり、宝冠など装身具は私的な費用で賄っていた。清子さんのティアラも私費でつくったものだ。
生活費として公費が支払われている皇族は、個人の所有物かそうでないか線引きがあいまいなところがあった。そうした背景も影響したのか、平成に入って三笠宮家の彬子さまが成年を迎えたあたりから、ティアラは宮内庁の予算として公金で制作されるようになった。
愛子さまのティアラがいつ新調されるのか、毎年注目されているが、宮内庁の2024年度の概算要求でも予算が計上されなかった。物価高など社会情勢を鑑みて、新調を控えているのだという。
■ひときわ大きな紀子さまのティアラ
今年の新年祝賀の儀では、皇后雅子さま、秋篠宮妃の紀子さまと次女の佳子さま、高円宮妃の久子さまと長女の承子さま、三笠宮家の彬子さま、瑶子さまも、それぞれ美しいティアラを着用した。
宮内庁の資料などによると、内親王だった秋篠宮家の長女、小室眞子さんのティアラと宝飾品は「和光」で2856万円、次女の佳子さまは「ミキモト」で2793万円をかけて制作された。大正天皇のひ孫にあたる三笠宮家や高円宮家の女王方の場合は1500万円前後だった。
なお、結婚した眞子さんのティアラは現在、宮内庁に預けられている。
皇后である雅子さまが着用したのは、明治以降の歴代皇后に受け継がれてきたティアラだ。
ティアラはもともと天皇の「由緒物」。それを明治天皇以降、歴代天皇が皇后に「お貸し下げ」してきた。
皇后が着用するティアラは複数あり、即位の儀や今年の新年祝賀の儀で雅子さまは、通称「第一ティアラ」と呼ばれる宝冠を着用した。
紀子さまのティアラも変わった。平成の時代は、ご結婚の際に新調したティアラをつけていたが、4年ぶりに女性皇族がティアラをつけて臨んだ今年の新年祝賀の儀では、紀子さまの顔の上のティアラがひときわ大きく輝いているのがわかる。
これは通称「皇太子妃の第一ティアラ」と呼ばれるティアラで、代替わりに伴って秋篠宮さまが皇嗣、紀子さまも皇嗣妃という立場になったことを受けて、雅子さまの元から移ったものだ。
元日に皇居周辺で皇族方を見ようと待っていた女性は「紀子さまのティアラが大きく立派で驚きました」と感想を漏らした。
元日に発生した能登半島地震を受けて、2日の新年一般参賀が中止となるなど、皇室は慎みの姿勢を見せた。
ティアラなどの宝飾品はぜいたく品ではなく、正礼装の装身具だ。宮殿行事や外国の賓客を接遇する晩さん会など、正礼装で迎えることが礼儀である場では着用が求められる。
しかし、人びととともに歩むのが令和皇室だ。皇族の女性方が華やかなティアラ姿で人びとの前に出る機会は、もうすこし先になるかもしれない。
(AERA dot.編集部・永井貴子)