伊勢神宮を参拝する愛子さま。聖域でお召しの白いロングドレスの参拝服が美しい=3月26日、三重県伊勢市、朝日新聞社

 白い参拝服に身を包んだ天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが26日、皇室の祖先とされる天照大御神を祭る伊勢神宮(三重県伊勢市)を参拝した。大学の卒業と就職を報告をするためで、おひとりで地方を訪問するのは初めてのことだ。愛子さまが着用していたのは白い絹地のロングドレス。この色にも意味があるという。

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 小雨の降るなか、白い参拝服で扇子を手にした愛子さまは、伊勢神宮の参道をゆっくりと進み、正宮で玉串を捧げて参拝した。

 天皇家では、成年や卒業など人生の節目に、皇祖神である天照大御神が祀られる伊勢神宮に参拝することが慣例となっている。

 愛子さまは2014年に続いて2度目。このときは、前年の秋に執り行われた式年遷宮「遷御の儀」を受けて、ご一家での参拝だった。

 12歳だった愛子さまは、正装として学習院女子中等科の制服で臨んだ。健康的に日焼けした愛子さまに、夏用のセーラー服がよくお似合いだった。

 このときの伊勢神宮の周辺の沿道には、愛子さまの姿をひと目見ようと大勢の人たちが集まり、帰路に着くご一家を乗せた車は速度を落としてゆっくりと走った。

 後部座席には、明るい笑みを浮かべて手を振る、当時の皇太子さまと雅子さま。おふたりの間に愛子さまが座り、恥ずかしそうに少しだけお手振りをしていた。そんな可愛らしい様子を、集まった地元の人たちも顔をほころばせて見守っていた。
 

伊勢神宮を参拝する愛子さま。聖域でお召しの白いロングドレスの参拝服が美しい=3月26日、三重県伊勢市、朝日新聞社

■愛子さまのご成長に地元も感慨深く

 通例であれば、内親王は20歳の成年を迎えた年に、伊勢神宮へ参拝してきた。しかし、愛子さまは21年12月に20歳の成年を迎え、翌3月に成年の記者会見を開いたものの、コロナ禍がまだ落ち着いていない時期でもあった。

「愛子内親王殿下が参拝すれば、大勢の人が集まることは容易に予想できることでした」(当時の宮内庁関係者)

 そうしたことも背景にあったのか、伊勢神宮への参拝は行われず、皇室の祖先などをまつる皇居・宮中三殿を参拝して、成年皇族となったことを報告した。
 

 あれから10年を経て、愛子さま成年皇族として白い絹地の参拝服であるロングドレスを着用して神事に臨んだ。

「前に愛子さまがいらしたときは制服で、まだ幼さの残るご様子でしたが、今回いらした愛子さまは穏やかで、落ち着いた雰囲気をまとっていらした。立派な女性皇族にご成長なさったお姿を拝見できて、感慨深いことです」(地元飲食店の店主)
 

前年12月に成年を迎えたことを報告するため、伊勢神宮外宮に参拝した秋篠宮家の次女佳子さま=2015年3月、三重県伊勢市、代表撮影/JMPA

■伊勢神宮では白、天皇陵ではグレーのドレス

 参拝では人間の俗世と神の住まう聖なる世界の境を出入りするため、古式にのっとって参拝の前後にお手水で身を清める。

 そして男性皇族はモーニングだが、愛子さまのように女性皇族はみな、絹の生地で仕立てられた白いロングドレスの参拝服を着用することになっている。

 たとえば2014年に参拝した際の雅子さま、成年の報告をした秋篠宮家の長女、眞子さんや次女の佳子さま、ご一家で訪れた紀子さま、平成の皇后だった美智子さまも、白いロングドレスをお召しだった。
 

20歳の成年を迎えた報告のため、伊勢神宮を参拝した秋篠宮家の長女、眞子さま(当時)=2011年11月、三重県伊勢市、代表撮影/JMPA

 ロングドレスの白という色にも、意味があるという。宮内庁の関係者だった人物は、こう話す。

「祭祀の際、神域では神職も白色の装束を用います。神宮への参拝の際は、女性皇族も白い参拝服をお召しになります。白は神聖なものや清らかさを表す色であるから、と聞いています」

 この白い絹地のロングドレスと帽子の素材に、純日本産の蚕である「小石丸」の繭で紡がれた絹織物が用いられたこともあったという。
 

秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さまが伊勢神宮へ参拝。佳子さまは学習院女子高等学校の卒業式を終え、6歳の悠仁さまは翌4月からお茶の水女子大学附属小学校への入学を控える=2013年3月、三重県伊勢市、代表撮影/JMPA

 愛子さまは翌日、伊勢神宮の参拝後の通例どおり、奈良県橿原市で皇室が初代天皇としている神武天皇陵を訪れた。この日は薄いグレーのロングドレスに黒の帽子、手に扇子を持って参拝し、大学卒業と就職を報告した。

 神武天皇陵の参拝服は、伊勢神宮とは異なり、濃淡はあるがグレーに変わる。大正天皇陵と貞明皇后陵、昭和天皇陵と香淳皇后陵がある武蔵陵に参拝する際と同じだ。

 この参拝服の色は「にび色」といい、喪や慎みの色だという。
 

 この春、人生の節目を迎えた22歳の愛子さま。これからご両親と離れ、おひとりでの歩みが始まる。(AERA dot.編集部・永井貴子)