MLBジャイアンツ時代の筒香嘉智(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本球界への復帰が毎シーズン噂になるものの、2020年にメジャー移籍後は米国でプレーを続ける筒香嘉智。今季もシーズン開幕前に所属チームを退団となったが年齢も現在32歳とベテランの域に入りつつあり、理想と現実の狭間で悩む大砲の決断に注目が集まっている。

 筒香は昨オフにMLBジャイアンツとマイナー契約を結び、春季キャンプに招待選手として参加。しかし、オープン戦6試合で打率.100(10打数1安打)、0本塁打、2打点と結果を残せず、開幕前の3月21日に自らチームを去る決断(オプトアウト)をした。

 昨シーズンはレンジャーズやジャイアンツのマイナーでプレーしたが、メジャー昇格なくシーズンが終了。渡米以降初めてメジャーでのプレーなしに終わった。そして、迎えた今シーズンも開幕前にフリーに。これまでは日本復帰の噂が浮上する度に米国でのプレー続行を選んできたが、今では以前からラブコールを送っているDeNAを筆頭にNPBで再びプレーすることが現実味を帯びているともいう。

「筒香の中で心境の変化も生まれているようです。契約内容なども影響してメジャー昇格の壁は高かった。イチ選手としてグラウンドに立つのはもちろん、納得できる場所でプレーしたい気持ちもあるのだろう」(筒香をアマチュア時代から知るスポーツライター)

 DeNAでは2016年に本塁打王になるなど、在籍10年間で205本塁打、613打点をマークした大砲は2019年のオフにポスティングシステムを利用してレイズに移籍。日本を代表する左の長距離砲の活躍に期待が集まったが、レイズでは苦しみ2シーズン目の途中にDFA(事実上の戦力外)となった。

 その後、ドジャースを経て2021年途中に加入したしたパイレーツでは43試合で打率.268(127打数34安打)、8本塁打、25打点とまずまずの結果を残して飛躍も予感させたが、その後は苦戦。2022年を最後にメジャーでのプレーからは遠ざかっている。

「渡米当初から速球への対応に苦しんだ。慣れ始めて結果も多少出始めたと思ったら腰痛に悩まされたりもした。技術、コンディションの両方でメジャーリーグのレベルに達していなかったという判断になってしまっている」(MLBアジア地区担当スカウト)

 MLBの実働3年間で182試合に出場し、打率.197(557打数110安打)、18本塁打、75打点では“戦力”として計算できない選手と思われるのは仕方がない。レイズ入団時は2年総額1200万ドル(約18億2000万円)というまずまずの評価を受けていたが、メジャーへの対応に苦しんだ。今季もマイナー契約を結んだジャイアンツからオプトアウトを選択し、チームから離れることを選んだ。

「今までとは意味合いが異なるオプトアウト。以前は『マイナーや独立でも構わないので米国で野球を終える覚悟』と語っていた。しかし今回は『必要としていただけるところで精いっぱい頑張ります』とコメントしている。状況次第では日本球界復帰の可能性もある」(在京球団編成担当)

 今年の11月に33歳となり野球選手としてプレーできる時間も限られつつある。その中で自身の影響力に関しても考え始めたと言われる。

「アマチュア球界に対して多くの提言をしている。野球施設を建設するなど、改革に自ら動いている。周囲への説得力を増すためにも、自らがプレーで結果を残すことの必要性も感じ始めたのではないか」(筒香をアマチュア時代から知るスポーツライター)

 筒香は数年前から日本の野球界へ多くの提言をしてきた。勝利至上主義やトーナメント制度への反対意見を述べ、故郷の和歌山・橋本市には総合スポーツ施設「筒香スポーツアカデミー」を建設して若い世代の育成にも取り組んでいる。筒香自らが野球選手としての存在感を発揮する必要性を今は感じてきている可能性も否めない。

 米国で結果は出せなかったものの選手としての市場価値は下がっていない。古巣DeNAをはじめ複数球団が興味を持っているとされる。

「DeNAが即座に獲得意思を表明した。その他にも巨人、広島などが前向きという声が聞こえる。渡米前ほどの成績は残せなくとも、経験豊富なベテランの存在は優勝を狙う球団にとっては心強い。国内復帰となれば獲得競争になるだろう」(在京球団編成担当)

 左打者の手駒が薄い球団にとっては絶好の選手だ。古巣DeNAは左の強打者が新人・度会隆輝と主将・佐野恵太くらい。巨人も右打者は豊富だが左の長距離打者に不安が残る。広島はレイノルズとシャイナーの外国人野手2人を獲得したが両選手とも右打者だ。

「筒香の守備力からして起用するなら内野は一塁と三塁、外野なら左翼になる。広島が最有力という記事が出たのは一塁、三塁が外国人選手だから。その他球団はポジションが埋まっているとはいえ、筒香が控えにいるのは心強い」(在京球団編成担当)

 MLBでは苦戦も目立ったが、日本で実績十分の筒香を獲得できれば様々な意味で大きな補強になるのは間違いない。何よりDeNA時代に我々を驚かせた日本人離れした打撃が米国で埋もれてしまうのは損失だ。そしてアマチュア球界に対する提言には多くの賛同があり、日本球界改善のためにもさらなる活躍を期待したいところ。今後、筒香自身が何を思い、どのような選択をするのかに注目したい。日本球界復帰に大歓迎のファンも多いはずだ。