心を動かされる出会いはありましたか?――天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまが2日、日本赤十字社への入社に際して宮内記者会の質問に文書で回答し、「結婚観」についての答えが話題になった。これまで女性皇族は結婚について、ユーモアを交えたり、キッパリ自分の考えを話したり、質問の答えから人となりが垣間見える。愛子さまが生まれた2001年から皇室番組の放送作家を務めるつげのり子氏も、愛子さまの答えから「らしさ」を感じたという。
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愛子さまは2日、日本赤十字社への入社に際して、宮内記者会の質問に対し、文書で回答された。
質問「ご成年の記者会見ではご自身の結婚について『まだ先のこと』と述べられていましたが、理想とする時期やパートナー像、結婚観について現在のお考えとともに、両陛下からのご助言があればお聞かせください。これまでに心を動かされる出会いはありましたか」
「成年の会見から2年が経過いたしましたが、結婚への意識はその頃と変わっておりません。一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的ではないかと考えております。
両親から具体的なアドバイスを頂いたことは特にございませんが、両親のようにお互いを思いやれる関係性はすてきだなと感じます。
心を動かされる出会いというと大げさに聞こえるかもしれませんが、私にとっては、これまでの出会い全てが心を豊かにしてくれたかけがえのない宝物であり、深く感謝しております。これからもさまざまな出会いに喜びを感じつつ、一つ一つの出会いを大切にしていきたいと思います」
つげ氏は、愛子さまの最近の「結婚観」について注目していたという。
3月の学習院大卒業にあたって、宮内記者会からの質問は結婚についてのものも含めて複数あったが、回答があったのは1問だけ。大学生活を振り返り、海外留学や大学院進学への希望をたずねるものだった。
「女性皇族の場合、この機会を逃すと、結婚について次に答えられるのは婚約内定の記者会見までない可能性が高いと思われます。つまり、こういったことを聞ける機会がない中で、なぜ1問だけのご回答になったのか、疑問に感じました」
しかし、愛子さまは日赤入社のタイミングで、再び文書回答を発表された。おそらく保留にしていた質問に回答されたものと思われる。
■紀宮さまはユーモアで
「心を動かされる出会いはありましたか」
今回と同じ質問は、過去にも女性皇族に投げかけられている。
「紀宮さま(現在・黒田清子さん)は『心を動かされる出会いはあったかもしれないし、なかったかもしれない』とユーモアを交えはぐらかし、(秋篠宮ご夫妻の次女の)佳子さまは『お答えするつもりはありません』のキッパリ系でした」
1992年3月20日に学習院大学文学部国文学科を卒業された紀宮さまは、卒業式の前日に記者会見を赤坂御所で行った。
「これまでに心を動かされる男性に巡りあったことは。理想の男性像や結婚観は」という問いかけに、「心を動かされる男性につきましては、先輩の言葉に従って、そのようなことはあったかもしれないし、なかったかもしれないとしか今は申し上げられません」と、柔和な笑顔を見せ、記者会見の場を和ませた。
「先輩」とは、紀宮さまの兄である天皇陛下のことだ。
天皇陛下が以前、「この1年間に理想の女性と巡り合われましたか」と質問され、「かもしれませんし、会わないかもしれません」と答えられた。紀宮さまはそのセリフを使って答えたのだ。
現在は、文書での回答が主流となっているが、当時は記者会見で自分の言葉で語られていた。機転の利いた答えに、紀宮さまらしさが伝わってくる。
一方、佳子さまは2019年3月の国際基督教大学の卒業に際して、結婚観と理想の男性像についての質問に、こう回答している。
「結婚の時期については,遅過ぎずできれば良いと考えております。理想の男性像については,以前もお答えしていますが,一緒にいて落ち着ける方が良いと考えております。
相手がいるかについてですが,このような事柄に関する質問は, 今後も含めお答えするつもりはございません」
■愛子さまの「両親」という言葉
そして今回の愛子さまの回答。つげ氏は、こう話す。
「どういう感じで答えられるのかなと思っていたのですが、愛子さまならではの心からの誠意が伝わるものでした」
つげ氏が注目したのは、「両親」という言葉だ。
「入社に際しての文書回答では、公のことを語るときには、父母である天皇陛下と雅子さまを『天皇皇后両陛下』とし、結婚観というプライベートなところでは『両親』と使い分けていらっしゃるんです。そこも愛子さまらしかったです」
文才がある愛子さまだけに、こうした細かい言い回しも、よく考えられたものかもしれない。
そして何より、文書には愛子さまの心の美しさがにじみ出ていたと、つげ氏は話す。
「『両親のようにお互いを思いやれる関係はすてきだなと』という言葉は、実際にそう思って日々を過ごされていることが感じられ、愛子さまのお気持ちが伝わってきましたよね。
また、特定の相手ではなく、出会い全般に関して『心を豊かにしてくれたかけがえのない宝物』と表現されたことに、とても感動しました。すべての出会いが愛子さまを成長させてくれたと素直に感謝していらっしゃる姿勢は、これまでの女性皇族にない捉え方で、愛子さまらしいなと感じました」
細部まで考え抜かれた言葉と、その清々しいほどの誠実さに、愛子さまらしさがにじんでいた。(AERA dot.編集部・太田裕子)