阪神・岡田彰布監督

 今季の阪神には昨シーズンのような絶対的な強さを感じない。不安定な戦いが続いているが、それでも現在のところ首位を走る巨人から0.5ゲーム差のセ・リーグ2位と上位につける。地力があるのか、それとも他球団が不甲斐ないのか。「アレンパ(連覇)」を目指す虎の戦いから目が離せない。(以下、文中の成績はすべて5月15日終了時点)

 先週末の戦いぶりもまるで“別のチーム”のようだった。5月11日のDeNA戦(横浜スタジアム)は最大7点差リードを守れず悔しい逆転負けを喫したが、翌日の同カードは先発・才木浩人が完封の投球を見せ、ジリジリするような投手戦を1対0で制した。

「逆転負けは少し前の低迷期には当たり前の光景。ロースコアを勝ち切るのは昨年の強いチーム。(勝った試合では)ここ数年で生まれ変わった阪神を感じた人もいるのではないか」(阪神関係者)

 岡田彰布監督の試合後コメントからも戦い方が不安定なのがわかる。

「初回からボール高いってお前、初回から言うてんのに」(11日敗戦後、先発・伊藤将司について)

「才木さまさまよ、はっきり言うて。それしかないよ」(12日勝利後、先発・才木浩人について)

 今季は先発投手にムラがあるのが気になるところ。昨シーズンのチーム防御率はリーグで唯一の2点台(2.66)で、先発(2.79)、救援(2.39)の防御率もともに断トツであり、投手力を中心とした守りの野球で勝ったのは明白だ。

 今年も先発(2.21)の防御率がリーグ1位タイ、救援(1.56)は1位と昨シーズンと変わらずに投手陣の奮闘がチームをけん引しているが、先発陣のパフォーマンスに個人差が生まれてしまっている。打線が開幕から湿りがちの状況で采配も難しくなっている印象だ。

「先発陣は開幕投手を務めた青柳晃洋をはじめ全体的に調子が一定しない。救援陣も5月に入って安定感を失っている。(数字的には良いが)投手陣を中心に守り勝つ昨年の野球ができていない」(在京球団スコアラー)

 先発陣では2021年から2年連続で最多勝となった青柳が6試合に登板して防御率3.34、昨年12勝の大竹耕太郎が7試合で防御率3.19、大竹に次ぐ10勝をマークした伊藤が6試合で防御率4.26と安定感を欠いている。

 昨季シーズン新人王とMVPを同時受賞した村上頌樹は7試合で防御率1.30、才木が7試合で防御率1.60と先発陣をリードしているが、少ない点差で勝つ野球をするためには全体的に先発陣が安定することは欠かせないだろう。

 加えて、投手戦が多くなっていることで勝ちパターンの投手の登板過多も気になる。クローザーとセットアッパーとして“併用”されている新助っ人のゲラと岩崎優は5月に入って、ともに打ち込まれ黒星を喫する試合があった。

 今後に向けては強みであるリリーフ陣を少しでも休ませる試合を増やす必要もあるため、先発投手と打線の奮起もカギとなってきそうだ。

「投手と野手は持ちつ持たれつ。どちらかの調子が下がる時は必ずあるからカバーし合わないといけない。しかし今年は打線が投手を援護しきれていない。しばらくは我慢の戦いが続きそう」(阪神OB)

 今年はプロ野球が全体的に「投高打低」となっているが、チーム打率.226はリーグ最下位となっている。一方で得点はリーグ2位の120と効率的に点は取れている。

「チーム一丸となって不足部分を補いながら戦っている。特に近本光司と中野拓夢の1、2番が必死にチームをけん引している。調子の上がらない大山悠輔、佐藤輝明、森下翔太の中軸をカバーしている」(阪神担当記者)

 近本と中野は打率こそ3割に届かないが出塁率はともに打率を大きく上回る(近本が.370、中野が.333)。何とか出塁して得点に繋げる意識が高いのがわかる。

 今後は中軸に当たりが出てくればさらに得点力は上がるだろう。佐藤は攻守に精彩を欠き、二軍で調整となっているが、実績十分の大山、2年目の“大砲候補”森下らの奮起を待ちたい。

 今季のセ・リーグは5月中旬を迎えても首位・巨人から最下位・DeNAまでのゲーム差は4.5しか開いておらず混戦の様相を呈している。

「阪神以外のチームが不甲斐ないとも感じる。対抗馬と見られた巨人は要所で勝ち星を落としたりする。他球団が潰し合いをしているので、しばらくは現在の団子状態が続くだろう」(在京球団スコアラー)

 正直なところ、阪神は連覇へ向けて良いスタートを切れたとは言えないだろう。だが、そんな状況でも2位に位置していることを考えると“地力”があり、“勝ちグセ”がついてきたようにも感じる。

「まあ強くなっているのだろう。(投打がちぐはぐな感じもあり)少し前の阪神ならズルズルと負けを重ねていたはず。勝負は夏を過ぎてからだから、小言は封印して見守りたい」(阪神OB)

 強豪チームというのは、強さは感じなくても気付いた時に勝っているもの。今の阪神はそういった状態に入りつつあるのかもしれない。優勝争いのポイントの1つと言われる交流戦もまもなく始まる。岡田阪神はこの先、どのような戦いを見せてくれるのか楽しみだ。