昨シーズンから日本ハムが本拠地として使用するエスコンフィールド北海道

 札幌ドーム(以下ドーム)とエスコンフィールド北海道(以下エスコン)、日本ハムの新旧本拠地は1年足らずで“明暗”が大きく分かれる形となった。ドームは存続すら危ういのでは?という声がある一方、エスコンは世界からも注目される新時代のボールパークになりつつある。

 3月2、3日にドームで開催された日本ハムと阪神とのオープン戦には寂しい光景が広がっていた。日本ハムが北海道に本拠地を移転した2004年から22年まで19年間使用した“故郷”での試合だったが、客入りは2日の試合が12937人、3日の試合が11360人と空席が目立った。

「週末の開催で日本一の阪神との対戦。大入りに近い客入りを期待していた関係者は肩を落としていた。日本ハムファンはもちろん、北海道の人たちからドームはそっぽをむかれたことが改めて浮き彫りとなった」(日本ハム担当記者)

 日本ハムはドームの高額な球場使用料など札幌ドームとの契約が折り合いがつかず、昨年から北広島市のエスコンへ移転した。それでもドーム使用に関する札幌市との契約は続いていたが今年度で終了となる見通しで、文字通り「見納め」になる可能性が大きい。

「札幌市の見通しの甘さが招いた最悪の結果。(ドーム以外にも)2002年のサッカーW杯などで建設された大規模会場の経営が行き詰まっているケースはあるが、ドームは過去最大の失敗例と言える」(北海道内テレビ局関係者)

 日本ハムが去った昨シーズンからはプロ野球の開催がなくなり、収入はサッカー・J1の北海道コンサドーレ札幌の主催試合が主となった。10億円をかけ2万人規模のイベントが開催可能な「新モード」導入も使用希望者は少なく、場内広告数も激減。また「年間2億5000万円以上、2〜4年間」という条件で公募した命名権にも申し込みがなく、募集を無期限で延長することとなった。

「命名権に関しては広告業界内では失笑すら起きている。稼働日数が減少している中で命名権にあの金額を払う企業(もしくは個人)が現れるとは思えない」(大手広告代理店関係者)

 年間3億円以上の赤字が想定され、地元では「血税を使うな。一刻も早くドームを解体せよ」という声も多く出ている。

「ドーム側は草野球やナイトラン(市民ランナーの使用)への広がりを強調するが焼け石に水。ネット上で議論されている競輪開催や解体して競馬場にする案などの方がよほど現実的にも感じる」(北海道内テレビ局関係者)

 3月30日開催の「SAPPORO MUSIC EXPERIENCE 2024」に望みを託しているようだが、単発イベント開催だけではどうしようもない状況だ。

 凋落が著しいドームを尻目にエスコンに関しては景気の良い話が止まらない。エスコンを運営する株式会社ファイターズスポーツ&エンターテイメントによると、昨年は来場者が年間300万人を突破。ドームが本拠地だったコロナ禍前2019年に9億5000万円だった営業利益は26億円となる見込みだという。

「開場2年目のエスコンは勢いが止まりそうにない。球場を中心とした街づくりも少しずつ形になりつつある。世間的注目度もより高くなり、スポーツのみならず経済関連のマスコミなどで見かける回数も増え宣伝効果がすごい」(大手広告代理店関係者)

 球場だけではなく、北海道医療大学がエスコンを中心とする複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」へ移転することも決まった。他にも同敷地内へ移転を考えている施設や企業との交渉も進んでいる。「エスコンを中心とした街づくり」が着々と形になり始めている。

「球場などのハードだけでなく斬新なソフトも出始めている。新庄剛志監督が発案した『111ホームラン賞』には今から注目が集まっている。第1号を放った選手はFビレッジの歴史に名前が刻まれる。選手間でも誰が打つのかを予想し合っていた」(日本ハム担当記者)

「111ホームラン賞」は新庄監督をモチーフにした看板に本塁打を当てた選手に賞金111万円を贈呈する企画。賞金額111万円は新庄監督の背番号1とエスコンのタワー11にちなんで決定された。このような“自由な発想”は自前球場ならでは。札幌市が所有するドームでは実現できないようなアイデアでもある。

 日本ハムが北海道移転後の約20年には多くのことが起こった。かつての不人気球団が地元最大の人気コンテンツとなり、チームも日本一になった。しかし、勝てない時期が続くと試合では空席が目立つようになり札幌市との関係も悪化、本拠地移転に繋がった。

「結果的には日本ハムにとって最高の流れができつつある。逆に札幌市の失政に関しても疑いようがない。勝ち組と負け組がこれだけ明確になるのも珍しい。全国の行政団体が札幌市を反面教師にして、スポーツなどのエンタメを大事にするはず」(大手広告代理店関係者)

 日本ハムからすれば素晴らしい新球場を手にし、あとはチームが本業の野球で結果を残すのみ。オフも積極的な補強に動き、オープン戦でも順調な戦いぶりを見せている。仮に今シーズン日本ハムが優勝争いに食い込めばエスコンにさらなる観客が訪れるのは明らか。ドームとの勢いの“差”がさらに浮き彫りとなりそうだ。