野生のイノシシは、人間の目を盗んでゴルフ場に侵入し、様々な被害を与えるといわれています。イノシシがゴルフ場に及ぼす害とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

『土浴び(泥浴び)』の習性による被害も多い

 ゴルフ場は、かつて山林や丘陵が広がっていた場所に建設されていることが多いので、周囲には自然が広がっています。

自然の中を散歩するイノシシ 写真:AC
自然の中を散歩するイノシシ 写真:AC

 そのため野生動物が迷い込んでくることもありますが、なかにはゴルフ場に被害を与える「害獣」も含まれており、その代表例としてイノシシが挙げられます。

 では、イノシシを始めとする害獣はゴルフ場に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。全国でゴルフ場運営を行う株式会社東急リゾーツ&ステイの広報担当者は以下のように話します。

「ゴルフ場の芝生の下の土には、ミミズや小さな虫が生息しています。イノシシはゴルフ場内に潜んでいるミミズや虫といったエサとなるものを食べるために侵入し、鼻を突っ込んで芝を土ごと掘り返してしまうので、特に厄介な害獣といわれています。一度忍び込まれると、周りの仲間にもエサが豊富にあることが伝わって集団で入られるので、何も処置していないとフェアウェイやラフが穴だらけになって、ラウンドどころではない状況と化してしまいます」

「イノシシが地面を掘り返すのにはエサを求める以外にも理由があります。全身に土をかける『土浴び(泥浴び)』をすることによって、体に付着した寄生虫を除去したり、体臭を消したりしているそうです。イノシシが土浴び(泥浴び)をする場所は『ヌタ場』と呼ばれ、実は一般的なイメージよりもきれい好きな動物です」

「ほかにも、イノシシと同じくらいシカによる被害も大きく、芝を食べてしまうだけでなくコロコロとした小さな糞が大量に転がっていることもあるので、ゴルフ場としては非常に困っています。さらに、カラスもゴルファーから敬遠されがちな存在で、お客様が持ち込んだお菓子などがカート内においてあるのを察知して物色したり、時として落ちてあったボールもくわえて持っていったりしてしまうこともあります」

イノシシの習性や知能の高さは厄介

 では、ゴルフ場はイノシシなどの害獣が寄って来ないようにするために、どのような対策を練っているのでしょうか。広報担当者は以下のように話します。

「基本的には、コース全体に電気が流れる柵を張り巡らせて、内部に入らないようにしています。少しでも体が電気柵に触れるとかなり強い刺激が走るので、動物はびっくりしてその場から立ち去ります。イノシシは特に学習能力が高いといわれているので、一度危険な場所だと覚えたらあまり戻ってこなくなるとされます」

「ところが知能の高さが裏目に出て、突破できる隙があったら飛び越えたり、トンネルを掘ったりして再び侵入してしまうこともあり、そのような場合は地元の猟友会に依頼をして駆除してもらっています。ほかには、ホームセンターでも売られている『オオカミのオシッコ』を通りやすい場所に染み込ませることによって、害獣に『オオカミの縄張りに誤って入ってしまった』と勘違いさせ、寄せ付けにくくしています」

「電気柵には5000〜10000ボルトの電流が流れていて、人間が触ると簡単に感電してしまいます。昼間はゴルファーが通りかかることもあってオフにしているのが通常ですが、本来イノシシは昼行性であることから最近は営業時間中でも目撃される事例が増えています。そのため1日中電気を流しているゴルフ場も多く存在し、柵の近くに落ちたボールを打つ際は十分に注意が必要です」

 イノシシを始めとする害獣たちは、決して悪気があってゴルフ場内に入り込んでいるわけではありません。しかし、ゴルファーの安全やコースを保護する観点からこのような策を施すのも、ゴルフ場を運営する企業の大切な仕事といえるでしょう。

ピーコックブルー