ヤマハレディースオープン葛城最終日、首位と5打差の5アンダーでスタートした小祝さくら(こいわい・さくら)が6バーディー、1ボギーの67をマーク。通算10アンダーで逆転優勝を飾った。今季初勝利で、ツアー通算10勝目。1打差の2位タイには竹田麗央(たけだ・りお)と岩井千怜(いわい・ちさと)。

コーチ不在でもスイングを自分でアップデート

◆国内女子プロゴルフ<ヤマハレディースオープン葛城 3月28〜31日 葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県) 6455ヤード・パー72>

 ヤマハレディースオープン葛城の最終日、首位と5打差の5アンダーでスタートした小祝さくらが6バーディー、1ボギーの67をマーク。通算10アンダーで逆転優勝を飾った。

 ある意味無欲の勝利だった。スタート時点で首位の竹田麗央と5打差あった小祝さくら。竹田とはシーズンオフにタイで合宿を張っており、その実力は十分把握している。

「麗央ちゃんが伸ばしてくると思っていたので、そうなると5打以上伸ばさないと。この難しいコースで7アンダーとか出すのは厳しいですし、まずは5アンダーを目標にしました」。

見事な逆転勝利でツアー通算10勝目を飾った小祝さくら 写真:Getty Images
見事な逆転勝利でツアー通算10勝目を飾った小祝さくら 写真:Getty Images

 前半のハーフでスコアを2つ伸ばすと、意外にも上位陣のスコアが伸びていないことに気がつく。十分射程圏内と判断してハーフターン。ところが、13番パー4で想定外のボギーを叩く。

「ティーショットのミスが原因ですが、気合を入れ直して次のホールに臨みました」

 まだ残り5ホールあるだけに、あきらめる理由はない。しかもまだパー5が2つ残っている。一段ギアを上げたかのように、14番から3連続バーディーを奪い、ついに首位に並ぶ。

 その直後、竹田がスコアを落としたため、小祝が単独首位となったが気を抜くことはない。最終18番パー5でも第2打をグリーン手前の花道に運び、そこからピン左上50センチにつけてバーディー。通算10アンダーで後続を待った。

 結果的に1打差で逃げ切った小祝。今季は2、3試合目を最終日最終組で回りながら、どちらも2位に終わる悔しい思いを経験していた。しかし、「ミスは出るもの。終わったことを悔やんでも仕方がないので、また次の試合で頑張ろう」と切り替えた。

 聞けば、常に問題意識を持っており、ミスの原因を考え、対策を練るように心がけているという。今回もショットがボールの上から入り過ぎ、左へ飛ぶ傾向があったので、高いボールを打つことで調整していた。

「ダウンスイングで上体が突っ込む傾向があったので、アドレスのときにボールの右半分を見る感じにしたら、上から入ることもなく、ボールを左に打ち出すこともなくなりました」

 現在はスイングコーチをつけていないが、そういった微調整を自分で行いアップデートできるようになったことが強さの秘密でもある。

常にうまくなる方法を考えている

 黄金世代と呼ばれる98年度生まれの1人だが、国内女子ツアーで10勝を挙げたのは小祝が最初だ。

「まさかそうなるとは予想もしていませんでした。ジュニア時代からすごい選手ばかりで、自分はプロテストも受かる気がしなくて、よくここまで来れたなと思います」。

 同学年のプロと比べても決して器用な方ではない。ただ、努力を惜しまず、一段ずつ階段を上がってきた結果が通算10勝という数字になった。たとえ勝っても慢心することなく、どうすればもっとうまくなるかを常に考えてきた。

 今回も「100ヤード以内のショットがうまくいかなかったので、そこが改善点です」と当たり前のように語る。課題がなかったときはなく、シーズンを通して常にドライバーやアイアンショットの修正点を考えているという。

 自分に厳しい一面を持ちながら、後輩にはやさしい先輩でもある。結果的に仲のいい竹田のツアー初優勝を阻んでしまったが、オフのタイ合宿では竹田に技術的なアドバイスを送ることも少なくなかった。そのうえでエールを送る。

「麗央ちゃんとの合宿では学ぶところがたくさんありましたし、自分も頑張らなきゃって刺激をたくさんもらいました。多分、今年中に優勝すると思います」

 メルセデスランキングでもトップに躍り出た小祝。自身初の女王へ向けて、まだまだ勝ち星を重ねるつもりだ。

小祝 さくら(こいわい・さくら)

1998年4月15日生まれ、北海道出身。98年度生まれの“黄金世代”の1人として2017年にプロ入り。19年サマンサタバサガールズコレクション・レディースで初優勝。23年シーズンは1勝を挙げて、メルセデス・ランキング4位に。ニトリ所属。

山西英希