JLPGAツアー「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」最終日は、通算8アンダーで上田桃子(うえだ・ももこ)、阿部未悠(あべ・みゆう)、佐久間朱莉(さくま・しゅり)の3人が首位タイでスタート。終盤に一歩抜け出した阿部が初勝利を手にした。

ソフトバンク・甲斐拓也とのオフトレで意識が変わった

◆国内女子プロゴルフ<富士フイルム・スタジオアリス女子オープン 初日(5日) 石坂ゴルフ倶楽部(埼玉県) 6535ヤード・パー72>

 最初から最後まで冷静にゴルフを楽しみながら、阿部未悠が初優勝を手にした。

「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」最終日は、通算8アンダーで並んだ阿部、佐久間朱莉、上田桃子を後続が追う激戦の最終日となった。

「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で初優勝を遂げた阿部未悠 写真:GettyImages
「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で初優勝を遂げた阿部未悠 写真:GettyImages

 阿部は1番イーグルと好発進した佐久間をバーディーでピタリと追走。6番、10番のバーディーで通算11アンダー。1打差に迫ったが、続く11番で7メートルのボギーパットを残す大ピンチを迎えた。だが、これを沈めて優勝戦線に踏みとどまる。

「今までの優勝争いでは『勝つぞ! 優勝したい!!』という気持ちが先走りすぎて空回りした時があったので、今日は後半勝負だと思ってました。10番のバーディーで『よし、ここから』と思った」とガッツポーズを決めていた。

 だが、その直後にボギー。「(ガッツポーズは)『まだ早いよ』と言われている気がして、ある意味いいボギーだったかもしれないです」と、気持ちを落ち着かせた。

 12番パー5のバーディーで落ち着くと、14番から3メートル、2メートル、4.5メートル、1.5メートルを決める怒涛の4連続バーディー。一気に佐久間をとらえ、単独首位に立って最終ホールを迎える。それでもガッツポーズは封印したままだ。

 1打リードで迎えた18番の第2打はグリーンオーバー。だが「練習ラウンドから奥に外してもグリーンが受けてると感じていた。想定内」とパーセーブ。1打差で佐久間を振り切り、ようやくガッツポーズを解禁した。

 初日の幕開けが5連続バーディー。最後も怒涛のバーディーラッシュで締めくくった。ここまで集中できる力はどこから来るのか。「(趣味の)写真撮影やものづくりだと待てますね。待つのが好き。待ってるときは他のことには気をそらさない」。これが、ゴルフにも生きた。

 今季は「ゴルフを楽しむ」ことをテーマにプレーを続けている。きっかけは、オフにソフトバンクホークスの甲斐拓也選手とともにトレーニングをしたこと。「もともと私がファンで、知人に紹介してもらって自主トレに参加させてもらいました。“推し”と会えて一緒にトレーニングできる世界線(編集部注:ファンタジーアニメ等で現実から枝分かれした並行世界といった意味で使われる)があるなんて」。その時、甲斐が口にしていた「野球を楽しむ」という言葉が、心に響いた。

「去年はつらいことが多かった。でも、ゴルフが好きでやってて、“好き”を職業にできるのは幸せなんだってハッとさせられました」。今季はそれを心がけ続けてきた。

 それが今大会は3日間うまくハマった。「優勝争いがすごい楽しいなと思ってゴルフできたのは初めてに近い感覚です。スコアを離されようが、楽しむことを忘れないようにしようと思ったら、冷静になれました」と勝因を語る。「(今大会まで)1勝もしていないのに目標は複数回優勝だったんです」と、立ち止まることなくチャンスを待ち続ける。

阿部 未悠(あべ・みゆう)

2000年9月27日生まれ、北海道出身。父の影響で10歳からゴルフを始め、2021年にプロテスト合格。昨年5月に行われた「リゾートトラスト レディス」ではホールインワンを達成。24年「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で初優勝。ミネベアミツミ所属。

小川淳子(ゴルフジャーナリスト)