日本では近年さまざまな職種で人手不足が叫ばれていますが、ゴルフ場も例外ではありません。では、ゴルフ場の人手不足はどれくらい深刻なのでしょうか。

若い子がキャディーの服を着たいと思うか?

 日本では、数十年前から少子高齢化の影響で人が集まらない職種が増えており、慢性的な社会問題となっています。

キャディーと聞くと、このような“ほっかむり“スタイルが思い浮かぶ
キャディーと聞くと、このような“ほっかむり“スタイルが思い浮かぶ

 ゴルフ業界でも同じことが課題とされており、高齢スタッフの引退と若い世代からの応募減少が重なって、人手不足が叫ばれています。

 では、ゴルフ場の人材不足はどの程度深刻なものになっているのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「キャディーは1日中ゴルファーの面倒を見なければならず、長時間屋外にいる仕事です。よって高卒でも一般的な大卒のサラリーマンと比較すると所得面では優遇されています。稼げる職業にも関わらずなかなか応募が集まらないのは、『大変な仕事』という以外にも、制服のデザインが現代のニーズに合っていないからという面もあります」

「キャディーが着る服と聞くと、ほっかむりにダボダボした作業服のようなものをイメージする人が多いかもしれません。しかし、高校を卒業したばかりの18〜19歳くらいの若い子が、そのような服を着たいと思うでしょうか? 最近では中学校や高校を制服のデザインで選ぶ人も多いです。キャディー服も長年同じ見た目のままで時代遅れと思われていたので、デザインの刷新が急務とされています。実際に、私もとあるゴルフ場の新しいキャディー服に関する会議やプロデュースに参加したことがあります」

「また、ゴルフ場を利用する側の年齢層も50代や60代前後と高めであるため、ジェネレーションギャップや『怒られそう』『話が通じなさそう』などの印象があり、キャディーの仕事に対してマイナスな印象を持たれがちです。以上のような理由が、キャディー志望の若い世代が増えにくい原因だといわれています」

「キャディーが不足するとセルフプレーにせざるを得なくなりますが、コンペでは現在でもキャディー付きを希望する人が多いため、コンペ顧客による増収が難しくなる点が指摘されています」

不足しているのはキャディーだけではない

 では、ほかにはどのような役職で人手が不足しているのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「コース管理者においても、キャディーと同じように人数が足りていません。コース管理者は、営業時間になる前の早朝から現場に出なければなりませんし、体力を必要とする作業もたくさんあります。さらに、場合によっては泥だらけになることもあり、いわゆる『3K』の仕事に該当します」

「人手不足が続くと優先度が高い作業にしか手が回らず、反対に優先度が低い作業は後回しのまま放置されて芝の状態が悪くなったり、ひいてはコース全体の美しさを維持できなくなったりするでしょう。そのため、賃金を引き上げるなど、福利厚生を充実させていく必要があると思います」

 ではゴルフ場では実際のところ、どのような方法で人手不足への対策を行っているのでしょうか。全国でゴルフ場を運営する、東急リゾーツ&ステイの広報担当者は以下のように話します。 「弊社でも、高齢化やコロナ以降の職場復帰率の低迷などの理由で、人手が不足しているゴルフ場は多いです。そこで、一部の接客やオペレーションのDX化を進めており、たとえばレストランの配膳やクラブハウス内の清掃にロボットを導入したり、自動精算機を増やしてフロントスタッフの負担を軽減したりしています。そして、今後はコース管理で用いる機械の自動化なども進めていきたいと考えています」

 このようにゴルフ業界では、少しずつですがゴルフ場で働くことに魅力を感じてもらえるような活動や、デジタル化の推進が行われています。労働環境の向上や、移り変わるニーズへの対応に最善が尽くされているのです。

ピーコックブルー