打ち下ろしのホールは全体が良く見えることに加え、飛距離も出やすいので気持ちよくプレーができそうです。ところが、このようなホールに限ってミスが多発することも。一体なぜなのでしょうか。

難しいと感じるのはメンタル面だけでなく物理的な要因も

 ゴルフ経験の浅いビギナーは、打ち下ろしのホールは飛距離も伸びて全体が見やすいことから比較的難易度が低いと思うこともあるようですが、経験豊富なベテランゴルファーの中には逆に難しいと感じる人が多いといいます。

 果たして打ち下ろしのホールではOBやミスショットが起きやすいのでしょうか。現役のシニアツアープロでゴルフスクールも経営している梶川武志氏に話を聞きました。

全体を見渡せてなんとなくプレーしやすそうですが… 写真:AC
全体を見渡せてなんとなくプレーしやすそうですが… 写真:AC

「打ち下ろしのホールの場合フェアウェイの幅やバンカーのほか、障害物になる木などの位置が良く見えますし、OBのエリアも分かりやすくなります。その結果、絶対に打ってはいけない場所がどうしても目に入るので難しいと感じてしまうのではないでしょうか」

「また、ほかのホールと同じくらいの幅のフェアウェイでも上から見ると狭く見えてしまい、コントロールが難しいと感じることも要因の一つです。私も無意識に難しいと感じてしまい、アドレスに入った時点で体が固くなっていることがあります」

「さらに、打つ前から難しいと感じていると、ボールの行方を早く知りたいと思ってしまうことからヘッドアップしてしまうのも、ミスが増える原因として考えられるでしょう」

 ミスが起きてしまうのはメンタル面が原因であることが多いですが、一方で物理的な側面も。梶川氏は「滞空時間が長いことと、アドレスが狂ってしまうことにある」と指摘します。

「打ち下ろしは平坦なホールに比べてボールの滞空時間が長くなります。そのため、普段からスライスが出る傾向にある人は曲がり幅がより大きくなるでしょう。いつも10ヤード程度スライスする人は、滞空時間が長いぶん15〜20ヤードほど曲がり幅が増えてしまうのでOBのリスクも高まります」

「また、打ち下ろしはアドレスで視線が下がりやすくなるのもミスが増える要因の一つです。視線が下がるとどうしても左肩も下がってしまい、アウトサイドインのスイングになってしまいます」

「するとスライスが出やすくなりますし、スライサーの人は曲がり幅がより大きくなるでしょう。加えて普段とは違うアドレスによりスイングの軸が崩れるので、トップやダフりも起きやすくなるのです」

アドレスを工夫して対策を

曲がり幅を考慮したアドレスを 写真:AC
曲がり幅を考慮したアドレスを 写真:AC

 では、打ち下ろしのホールでミスを避けるコツはあるのでしょうか。梶川氏は以下のように話します。

「メンタル面はすぐ修正することがなかなか難しいので、ラウンド経験を重ねて慣れていくこと以外に方法はないかもしれません。しかし、滞空時間によって曲がり幅が大きくなるミスについては、そのぶんをあらかじめ予測したうえでアドレスに入ることが重要だと思います。つまり『スライスが出やすい人は、いつもより左を向いて打つ』とことを考えてみてください」

「視線が下がってしまうことについては、アドレスでホール全体を見た後、視線を水平に移してテークバックを開始するといいでしょう。例えば、水平位置が地平線なのであればアドレスの前に確認しておき、テークバックをするときはその場所を確認してから動き始めると左肩も下がりにくくなります」

 このように打ち下ろしはホール全体を見渡せてしまうがゆえに、無意識のうちにバランスの悪い打ち方になりがちです。

 安定したショットを打てるようになるためには、ミスの原因を認識しておくことが大切。メンタル面だけでなく物理的な側面やスイングにも原因は潜んでいるので、自身のプレーを今一度思い返してみてはいかがでしょうか。

ピーコックブルー