多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、国内男子ツアー選手の片岡尚之。パットの名手といわれる片岡が教えてくれたパッティングがうまくなるコツとは。

片岡尚之のプロ入り後の平均パット数の注目

 群馬県のTHE CLUB golf villageで国内男子ツアー「For The Players By The Players」が行われました。大きな特徴は、ツアー唯一のステーブルフォード方式(ポイントターニー制)で行われたこと。パーは0ポイント、バーディは2ポイント、イーグルは5ポイント、アルバトロスは8ポイント、ボギーはマイナス1ポイント、ダブルボギー以上はマイナス3ポイントとして総得点を争います。

 ストロークプレーとの大きな違いは、アグレッシブなプレーが見られることです。例えば、ストロークプレーなら「1バーディー、1ボギー」の場合は±0の「イーブンパー」となりますが、ポイントターニーの場合はバーディーが2ポイント、ボギーがマイナス1ポイントですから「1ポイント」になるわけです。

 そんな今大会を制したのが、ニュージーランドのマイケル・ヘンドリー選手でした。最終日に6ポイントを加算し、通算38ポイントで2015年の「東建ホームメイトカップ」以来となるツアー通算2勝目を挙げました。

プロ入り後は常に平均パット数の上位にランクインしてる片岡尚之 写真:JGTOimages
プロ入り後は常に平均パット数の上位にランクインしてる片岡尚之 写真:JGTOimages

 ヘンドリー選手は昨年の開幕戦後に白血病を発症。一時は15キロ以上も体重が落ちたそうですが、トレーニングで体重を戻して昨年11月の豪州ツアーで復帰。闘病生活を経てつかんだ今回の勝利は非常に感動的でした。

 さて、私はこの大会の初日に現地で解説を務めさせてもらいました。ラウンドを終えた選手数名に解説席で話を聞く機会があったのですが、その中で紹介したいのが初日に15ポイントをマークして首位タイに立った片岡尚之選手の話です。

 片岡選手はパットの名手として知られているプレーヤー。プロ入り後の平均パットは2020-21年1位(1.7439)、22年2位(1.7071)、23年2位(1.7102)という成績です。そんな片岡選手に「パットのコツは?」とたずねると、こう答えてくれました。「手先で打たずに、胸と手元とヘッドの3つの関係性を変えずに打つことを一番意識しています」

風船を使ったパター練習がオススメ

 ショットに比べて動きが小さいパッティングは、ついつい手先だけでヘッドを動かしてしまいがち。しかし、これではヘッドの動きをコントロールできず、思ったところに転がせなくなります。

 片岡選手のパッティングの感覚をつかむには、風船を使った練習がオススメです。両腕の間に風船を挟んだ状態でストロークすると、ヘッドと手元と胸が一体化しやすくなります。今まで手打ちをしていた人は、「こんなに背中が動くものなんだ」と感じるはず。パッティングがどんどん安定してきますよ。

片岡尚之(かたおか・なおゆき)

1997年生まれ、北海道出身。アマチュア時代はナショナルチームで活躍。「ノムラカップアジア太平洋チーム選手権」で日本の26年ぶりの優勝に貢献した。東北福祉大4年の2019年にプロ宣言。21年の「ジャパンプレーヤーズ選手権」でツアー初勝利を飾った。プロ入り後の平均パットは2位(23年)、2位(22年)、1位(20-21年)というパットの名手。CS technologies所属

石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

小澤裕介