初代ルノー5(サンク)は1972年にBセグメントのコンパクト・ハッチバックとして誕生した。当時はオイルショックやライフスタイルの変化などクルマを取り巻く環境が大きく変わりつつあり、電動化をはじめとした「CASE」や「100年に一度」と言われる現在同様、自動車の変革期を迎えていた時だった。1984年には2代目が登場したもののサンクの歴史はここまでで、その後、1990年にデビューした「ルノー・クリオ」(日本名ルーテシア)にバトンを受け継いだ。

車名は、ルノー5 E-TECH エレクトリック

そのサンクが今回、「Renault 5 E-Tech electric」(ルノー5 E-TECH エレクトリック)という名の電気自動車=バッテリーEV(BEV)として復活することになった。

日本円で約400万円〜

コンパクトBEV向けプラットフォーム「AmpR」(旧CMF-B EV)をベースに3年で開発されたという「ルノー5 E-TECH エレクトリック」は約2万5000ユーロ〜(日本円で約408万円。補助金は含まず)という価格設定で、2024年9月からのデリバリーが予定されている。

ボディ・サイズは、「ルノー・トゥインゴ」とルーテシアの中間くらいで、全長×全幅×全高=3.92×1.77×1.50m。ホイールベースは2.54m。コンパクトなボディは前後オーバーハングも短く、取り回しの良さも期待できる。バッテリーを床下に積むことで326リッターという実用的な荷室容量も確保する。

遊び心に溢れるデザイン

BEV化された3代目も歴代のサンク同様、遊び心に溢れるデザインが与えられた。鮮やかなボディ・カラーをはじめ、笑みを浮かべているようにも見えるヘッドランプ、ボンネットのベント・グリル、縦長のリア・ランプ、彫刻的なスポイラー、2トーン・ルーフなどのユニークなディテールが目を惹く。足元には195/55R18タイヤを装着し、アルミホイールには「ルノー5ターボ」から影響を受けた加飾が施された。

また、ボディ・カラーは訴求カラーとなる「ポップ・イエロー」と「ポップ・グリーン」のほか、「パールホワイト」、「スターリーブラック」、「ミッドナイトブルー」を設定。さらに、「スターリーブラック」の2トーン・カラーは最上級グレードである「アイコニックサンク」と中級グレードの「テクノ」に用意される。

3タイプのモーターを用意

搭載されるモーターは、ベースとなった「メガーヌE-TECH エレクトリック」や「セニックE-TECH エレクトリック」(いずれも日本未導入)のモーターよりもコンパクトで、モーターはレアアースを使わない永久磁石式で、その出力は110kW(150ps)、90kW(122ps)、70kW(95ps)の3タイプを設定されている。110kWのモーターは52kWhのバッテリーと組み合わされ、90kW版と70kW版は40kWhのバッテリーと組み合わされる。

充電は11kWのAC(交流)普通充電、80kWまたは100kWのDC(直流)急速充電に対応し、最大容量52kWhのバッテリーの場合、最長で400km(WLTPモード)の走行が可能だ。11kWの普通充電の場合、52kWh版バッテリーは約4時間30分で満充電になる。

またBEVでありながらトレーラーを牽引することも可能で、牽引能力は500kgとなっている。さらに家電などに給電できる「V2L(vehicle to Load)」、BEVを蓄電池として使用することで電力の融通を図る「V2G(vehicle-to-grid)」にも対応した。

ルノーの公式アバター「Reno」を搭載

10.1インチディスプレイが目を惹くインフォテイメント・システムには、Googleが内蔵された「OpenR Linkシステム」に加えて、ルノーの公式アバターである「Reno」が迎えてくれる。ドライバーや乗員からの問いかけに反応し、充電予約をしたり、航続距離を延ばすアドバイスを受けられたりするという。

そのほか、内外装にリサイクル素材を使っているほか、自動運転「レベル2」相当のアダプティブクルーズコントロール(ACC)なども用意される。

なお、ルノー・ジャポンも日本へ導入を検討中だという。ただし、導入時期や価格は現時点では明らかにされていない。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)