これがポルシェ・カイエンSクーペに乗った自動車評論家の塩見智の本音!「特徴なく速いV6からワイルドで速いV8へのスイッチには大賛成」
「V8には大賛成! 」塩見智
最高出力474ps、最大トルク600Nmを発する4リッターツインターボV8エンジンは最高of最高。速くて音がよい。
特徴なく速いV6エンジンからワイルドで速いV8へのスイッチには大賛成だ。
単純だが、6気筒より8気筒のほうが確実にフィーリングがよいという実利があるし、記号的にも強い。ポルシェのダウンサイジングからライトサイジングへのストラテジー見直しは好ましい。豹変できるのが君子だ。
電動化だってそう。電動化を推進してもよいけれど、違うと思ったら戻るべき。混迷の時代、それができないと大メーカーだろうと他に飲み込まれてしまう可能性がある。
VWグループを飲み込もうとした挑戦を経て、その一員として落ち着いたポルシェ。プラットフォームもパワートレインもグループが開発したものを用いるが、同じコンポーネンツを使う他ブランドのプロダクトに比べ、挙動も操作性も明らかに精緻だ。他のじゃなくポルシェを買う理由がある。
文句はひとつだけ。ボタンプッシュでエンジンを始動させないで、ひねらせてくれ! あの儀式が好きなんだ。
「スポーティネスが強まった」田中誠司
ポルシェのクレストを掲げたモデルには、闘うこと、速く走ることが運命づけられている。レース史を担い続けてきた911というモデルの“呪縛”から、ずっと逃れられなかったのもそれが理由だ。
ここ20年、むしろミドシップ・スポーツのボクスター、ケイマンやSUVのカイエン、マカンがポルシェのビジネスを牽引してきたのは誰もが知る事実だ。けれども911がより高性能を極める中で、ポルシェというブランドの本質がより先鋭化したのは間違いない。
そんな中、カイエンにはクーペが追加され、一度はV6を使っていたSモデルはV8エンジンに戻された。911がスポーティネスをさらに強める中、稼ぎ頭の他モデルにも同様のイメージが欠かせないのだろう。
クーペSの最新モデルは、7000rpmまで淀みなく続く太いトルク、レスポンスに優れるトランスミッション・ステアリングとあいまって、ポルシェのスポーツカーに乗り慣れているひとが乗り換えても違和感をまったく覚えないはずだ。状況が許す限り速く走らせて、日常にカレラのムードを持ち込みたくなる。
写真=郡大二郎(メイン)/茂呂幸正(サブ)
(ENGINE2024年4月号)