企業によっては退職金制度が整備されているため、定年退職時などに退職金がもらえて、退職後の生活を安定させることができます。しかし、退職金は全額もらえるわけではなく、退職金額などによっては、所得税などを支払わなければなりません。   本記事では、10年間働いて退職金が800万円の場合に、どれくらいの所得税がかかるかについて解説しますので、参考にしてみてください。

「10年」働いて「退職金が800万円」の場合はどうなる?

10年働いて、退職金が800万円の場合に、税金がかかるかどうかについてですが、結論からいってしまえば、税金はかかります。税金の計算には、課税退職所得金額を把握する必要がありますが、それは、会社から支給される退職金から、退職所得控除額を除いて、1/2にした金額になります。退職金では、特定の計算式によって退職所得控除額が計算されますが、勤続年数が20年以下なのか、20年超なのかによって、計算式が違ってきますので注意しましょう。

退職所得控除額

勤続年数20年以下 40万円×勤続年数
勤続年数20年超  800万円+70万円×(勤続年数−20年)

10年働いて、退職金が800万円ならば、勤続年数20年以下に該当するため、(40万円×10年=400万円)が退職所得控除額になります。課税退職所得金額は、退職所得控除がされた後に1/2にして計算しますので、〔(800万円−400万円)×1/2=200万円)〕が課税退職所得金額になります。自分がどれくらいの所得税を支払うことになるのかについては、この課税退職所得金額の200万円を基準として計算されます。
 
また、課税退職所得金額は、ほかにも住民税などの計算にも使用されるため、課税退職所得金額の計算が間違っていると、全部の計算がずれてしまいます。自分がもらえる退職金額と勤続年数についてはしっかり把握して、間違いがないように計算することが大切です。
 

10年働いて退職金800万円の所得税

退職金の所得税では、課税退職所得金額によって、所得税率や控除額が決められています。課税退職所得金額が200万円の場合では、税率は10%で、控除額は9万7500円になります。〔200万円(課税退職所得金額)×10%(税率)−9万7500円(控除額)=10万2500円〕が所得税額になります。所得税には、復興特別所得税額として2.1%が加算されるため、復興特別所得税額は(10万2500円×2.1%=2152円)となり、最終的な所得税額は(10万2500円+2152円=10万4652円)になります。
 
課税退職所得金額の金額ごとの税率や控除額は、図表1を参考にしてください。
 
図表1

課税退職所得金額 所得税率 控除額
1000円から194万9000円 5% 0円
195万円から329万9000円 10% 9万7500円
330万円から694万9000円 20% 42万7500円
695万円から899万9000円 23% 63万6000円
900万円から1799万9000円 33% 153万6000円
1800万円から3999万9000円 40% 279万6000円
4000万円以上 45% 479万6000円

国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和4年度版)「退職金と税」を基に作成
 
通常の所得税と同様に、課税金額が多くなれば、税率と控除額も高くなるため、退職金額によっては、税率が高くなって、もらえる退職金額が少なくなるかもしれません。自分がどれくらいの退職金がもらえて、どれくらいの所得税がかかるのかについては、しっかり把握しておくことが重要になります。
 

まとめ

10年間働いて、退職金が800万円の場合は、所得税などが発生するため、自分で退職金を全額使えるわけではありません。勤続年数が10年よりも長ければ、そのぶん所得税が控除されますが、退職金額が大きくなれば、税率は上がります。このように、退職金に対してかかる税金の計算には、退職金額と勤続年数が大きく関係してきます。退職金は、退職後の生活などを安定させるために必要になるだけではなく、住宅ローン返済などにも使用されるなど、さまざまなことにかかわってきますので、しっかりと確認しておくことが重要です。
 

出典

国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和4年度版)退職金と税
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー