東京都は、地方と比べて高い時給で働ける企業や店舗が数多くあります。地方出身者の多くは、最低賃金が1000円を超える東京都の状況を目の当たりにすると、非常に魅力的に感じるでしょう。   では、時給1000円以上が当然の東京都内で仕事をすれば、1人暮らしでも余裕のある生活ができるのでしょうか。今回は、総務省統計局の家計調査をもとに東京都の単身者の平均支出を確認し、ゆとりのある生活が可能かどうかを検証します。

東京都内で働くと月にいくら稼げる?

まずは、東京都で働くとどの程度のお金が稼げるのかを考えます。令和4年度の東京都の最低賃金は1072円となっているため、東京都内であれば、それ以上の時給での労働が可能です。
 
また、株式会社カカクコムが運営する求人サイト「求人ボックス」には、地域ごとの時給や給料のデータが公表されています。令和5年4月に求人ボックスに掲載された求人情報からの算出によると、東京都のアルバイト・パートの平均時給は1117円です。
 
これらのデータから、時給を1100円と設定。1日8時間、週に5日働いたとすると、月収は17万6000円です。業種や職種、働き方等により上下しますが、東京都で働くと月に18万円程度の収入は得られると仮定して問題ないでしょう。
 

東京都内の1人暮らしの平均支出額は?

東京都内は地方と比べて時給は高いものの、物価も高いといわれます。では、総務省統計局の家計調査のデータから、東京都に住む単身者の支出額を確認してみましょう。令和4年分の同調査結果によれば、単身世帯のうち勤労者世帯の1ヶ月あたりの平均消費支出額は約17万8000円です。
 
大都市に限定すると約18万1000円、さらに関東に限定したデータでは約19万6000円となっています。生活スタイルによって異なるものの、これらのデータから、東京都内に住む1人暮らしの世帯の1ヶ月あたりの支出額は19万円前後と考えて良さそうです。
 

■住居費用を差し引いても月の支出額は約15万円

家計調査結果から算出できる月19万円前後の消費支出額には、住居にかかる費用も含まれています。同調査結果によると、単身世帯のうち勤労者世帯の1ヶ月あたりの住居費用はもっとも高い関東圏でも約3万8000円です。
 
それでも安いと感じるのは、東京都内での1人暮らしであっても自身や家族の持ち家、あるいは社宅に住んでいるケースがあるためと考えられます。この住居費を差し引くと、東京都内の単身世帯における1ヶ月あたりの支出額は約15万円となります。
 

■東京都内の家賃相場と支出総額


 
東京都内でも月の家賃が3〜4万円台の賃貸物件は存在しています。しかし、数としてはあまり多くはありません。株式会社リクルートが運営する物件情報サイト「SUUMO」には、東京都内の家賃相場が掲載されています。
 
これによると、ワンルームの場合、東京23区でもっとも安いのは葛飾区で5万6000円となっています。もっとも高いのは港区で10万9000円です。相場は6〜7万円程度となるでしょう。これを月の支出額と合計すると、東京都内でワンルームに住む単身者の1ヶ月あたりの支出額は21〜22万円程度と考えられます。
 

ぜいたくや十分な貯蓄は難しいケースが多い

上記の数字は、あくまでも統計データや各企業の保有する情報をもとに算出したものですが、これらの数字からみると、時給が高いとはいえ、東京都内での1人暮らしは決して余裕があるとはいえなさそうです。また、統計には富裕層も含まれているため、平均よりも支出を抑えられる可能性はあります。
 
1000円を少し超える程度の時給でも、東京都内で1人暮らしができないわけではありません。しかし、日常的にぜいたくをしたり、毎月十分な金額を貯蓄に回したりできる人はほとんどいないのではないでしょうか。
 

時給1000円以上でも東京都内での1人暮らしは余裕とはいえない

東京都内で働くと、地方よりも多くの収入が得られやすいでしょう。しかし、業界や職種、勤める企業にもよりますが、時給1000円を少し超える程度では、東京都内で余裕のある1人暮らしができるとはいえません。収入を上げたり支出を抑えたりするなどの行動や工夫が必要になりそうです。
 

出典

厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧

総務省統計局 家計調査家計収支編2022年

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー