相続時精算課税制度は、次世代への早期の資産移転、およびその有効活用を通じた経済社会の活性化を目的とした、贈与税の制度です。多額の贈与がある場合に使いやすい制度ですが、毎年申告が必要、相続税が高くなる、といった問題点もあります。   2023年度の税制改正で大きく変化する、相続時精算課税制度の変更点と注意点について解説します。

2023年以降の相続時精算課税制度

相続時精算課税は、2500万円までの贈与に関して贈与税が非課税となり、贈与された財産に関しては相続時に精算される制度です。
 
2023年度の税制改正によって、年間110万円までの非課税枠の追加、被災した場合は相続時に再評価する、といった内容に変更されます。相続時精算課税制度の変更点について解説します。
 

相続時精算課税の概要

相続時精算課税制度は、父母や祖父母から18歳以上の子や孫に対する贈与において利用できる制度です。2500万円の特別控除額があるため、同一の父母または祖父母から上限2500万円までの贈与に関しては、贈与税が課税されません。
 
その後、相続時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、すでに支払った贈与税額を精算します。
 
贈与を受ける際には、相続時精算課税制度と暦年課税制度を併用できないため、どちらを利用するか選択しなければいけない点には注意しましょう。
 

年間110万円の贈与まで非課税

2023年度の税制改正以降の相続時精算課税制度においては、年間110万円までの非課税枠が設けられます。
 
これまでの相続時精算課税制度では、毎年贈与額を申告する必要がありました。仮に1年間贈与がなかった場合でも申告が必要なため、申告の手間が面倒だ、という意見もありました。
 
税制改正以降は、年間110万円まで非課税なので申告も不要です。これまで以上に相続時精算課税制度を使いやすくなるでしょう。
 

相続財産が被災した場合は再評価

2023年の税制改正により、万が一贈与財産が被災した場合、相続時に資産価値を再評価するようになります。
 
これまでの相続時精算課税制度では、贈与があった時点での資産価値で相続税を決定していました。そのため、万が一贈与後に被災して財産価値が落ちたとしても、贈与した当時の資産価値で評価され、実際の資産価値よりも高い相続税が課される可能性もありました。
 
2023年以降、万が一贈与財産が被災した場合には、相続時に再評価されるので、実際の資産価値よりも高い相続税を納めなければいけない可能性が低くなるでしょう。
 

相続時精算課税制度のメリットと注意点

相続時精算課税制度には、贈与税の非課税金額が大きい、亡くなったときの相続トラブルを回避できる、といったメリットがあります。
 
一方で、贈与した資産に関しては相続時に精算される、暦年課税と併用できない、といった点には注意しましょう。
 

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度には、以下の3つのメリットがあります。

【相続時精算課税制度のメリット】

2500万円まで贈与税が非課税
相続トラブルを防ぐ
贈与後に値上がりした場合は節税になる

一度に110万円以上の贈与をする際には、2500万円まで非課税で受け取れる相続時精算課税制度を利用することで、贈与税を節税できます。
 
また、相続前に財産を贈与しておくことで、亡くなった後の相続トラブルも防げるでしょう。
 
仮に贈与後に資産価値が上昇した場合、贈与時の資産価値で計算してくれるので、相続税を安く抑えることもできます。
 

相続時精算課税の注意点

相続時精算課税制度は、贈与税に対して2500万円の控除枠が使える制度です。後で相続税が必要となる点には注意しておきましょう。ただし、2023年の税制改正以降、110万円以下は非課税となります。
 
贈与額が2500万円の枠を超えた場合は一律20%の税率がかかります。また、年間110万円以下なら非課税ですが、年間110万円を超えると毎年申告が必要です。年間贈与額110万円を超えた際や、贈与額2500万円を超えた際のルールも覚えておきましょう。
 

まとめ

2023年度の税制改正によって、相続時精算課税制度の使い勝手がよくなります。年間110万円以下の贈与は非課税となるため、申告が必要ありません。また、贈与後に財産が被災した場合には、相続財産が再評価されます。
 
相続時精算課税をより使いやすく改正される一方で、相続税を支払う必要がある、一度相続時精算課税制度を選ぶと暦年課税制度は選べない、といった点はこれまでと変わりません。相続時精算課税制度を利用すべきかどうかは、慎重に判断しましょう。
 

出典

財務省 令和5年度税制改正(案)のポイント
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4103 相続時精算課税の選択
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー