家族を介護するために介護休業を取得した場合、介護休業中の賃金は支払われない場合が多いようです。介護休業での収入減少をカバーする制度があることを知っていますか?   本記事では、仕事と介護の両立を目指すための給付金制度について解説します。

介護休業に給付金があるの?

家族を介護するために休業して、休業期間中の賃金が支払われない、または賃金が休業開始前の80%以下に下がってしまった場合などに申請できる「介護休業給付金」があります。給付金は、通算93日を限度に3回まで支払われます。
 
この制度を申請するためには、主に以下のような条件が必要です。
 

●介護休業開始日の前2年間のうち、雇用保険に加入している期間が12ヶ月以上あること(パート、アルバイト、契約社員なども対象です)
●介護休業の後に必ず復職すること
●介護休業をする人が、産前産後休業中・育児休業中ではないこと
●病気などで2週間以上にわたり、常時介護が必要な状態の家族を介護するための休業であること
●介護休業取得予定日から93日と6ヶ月を経過する日までに雇用主との労働契約期間が終わらずに、継続して勤務できること

 
この制度を申請できないのは、主に以下に該当する人です。
 

●介護休業後に退職する予定の人
●在職中の事業所の労使協定で、介護休業の取得対象外とする規定にあてはまる人

 

給付金は、どのくらいの金額が支給されるの?

2022年8月1日からの支給上限額は、1支給単位期間(1ヶ月)あたり33万5871円です。支給額の計算に使われる「賃金日額」は、介護休業開始前6ヶ月の賃金を180で割った金額です。賃金日額に30をかけた金額が「賃金月額」となり、下限は7万9710円・上限は50万1300円です。
 
支給額の計算式には、大きく分けて2通りあります。
 


(1)休業期間中に賃金が支払われていない、または支払われた賃金が賃金月額の13%以下の場合
支給額=休業開始日賃金日額×支給日数×67%
 
(2)休業期間中に、賃金月額の13%超〜80%未満が支払われている場合
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数の80%相当額と賃金の差額

 
タイトルに記載した、年収が360万円(賃金日額1万円)の約74%にあたる約267万円へ減少したAさん(介護休業93日)の場合は、以下の試算金額が給付される見込みです。
 

<例1:賃金日額1万円で、賃金なしで93日介護休業したAさん>

日額1万円×93日×67%=62万3100円
 

<例2:賃金日額1万円で30日間休業し、期間内に賃金が6万円(賃金月額の20%)支払われたBさんの場合>

賃金日額1万円×30日×80%=24万円(月額の80%)
支給額=24万円−賃金6万円=18万円
 
Aさん・Bさんに共通して、支給単位期間に在職中の事業所からの賃金が月額の80%(24万円)以上支払われていた場合には、給付金は支払われません。
 

申請する前の注意点は?

申請する前の注意点として、主に以下のようなこともあります。
 

・給付金申請は、休業期間が終わってから申請する

介護休業期間が終わってから申請できる制度で、在職中の事業所を管轄するハローワークに申請書類を提出します。
 

・支給単位期間中に働いた期間が10日間以下である

介護休業期間中に働いた場合、1ヶ月(1支給単位期間)のうちに働いた日が10日間を超えるとその支給単位期間は給付金が支払われません。
 
例えば、休業開始日が6月1日で休業終了日が7月20日(2支給期間・休業50日間)のうち、6月中に10日間以上働いた期間があった場合、6月1日〜30日(1支給期間)は給付期間対象にならず、7月1日〜20日(1支給期間)が給付対象期間となります。
 

・介護対象の家族範囲が決められている

介護対象となる家族は、主に「配偶者・父母(養父母と、配偶者の父母を含む)・兄弟姉妹・祖父母・子ども(養子を含む)・孫」です。対象家族への介護でないと、給付金の支給対象になりません。
 
このほかにも、さまざまな要件を満たさないと支給されないので、休業を取得する前に支給条件を確認しておくのがよいでしょう。
 

まとめ

介護休業給付金は、介護休業で収入が80%以下に減った人に支給される給付金で、雇用保険に加入している会社員・パート・アルバイトなども申請できるのがメリットです。申請には、勤務先が発行する賃金月額証明書などが必要なので、介護休業を取得する前に勤務先の総務担当者に相談してみましょう。
 

出典

厚生労働省 第11章 介護休業給付について

厚生労働省 Q&A〜介護休業給付〜

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー