老後の生活資金に困り、自己破産を選択せざるを得なくなる「老後破産」。   人生100年時代といわれる現代において、老後の資金繰りに困る人々の増加が問題視されています。   厚生労働省が行った「令和3年度被保護者調査 年次調査(基礎・個別)」では、経済的に困窮している人を対象に支給される生活保護の受給者のうち、60歳以上が占める割合が60.4%と、過半数を大きく上回っていることが明らかにされました。   そこで、本記事では、複数の調査結果をもとに、日本における老後破産の実態と、老後破産回避のために、日頃から意識しておくべき対策方法について解説します。

複数の調査から判明した老後破産の実態

ここでは、老後破産の実態について、三つの調査結果をもとに解説します。
 

破産債務者のおよそ25%が60歳以上

日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、自己破産を選択した人のうち、60歳以上の割合は25.72%でした。
 
70歳以上の割合は、2002年調査では2.73%でしたが、2014年調査では8.63%、2017年調査で7.51%に減少したのち、2020年調査では再び増加し9.35%となっています。
 
破産理由は「生活苦・低所得」が61.69%ともっとも多く、次いで「病気・医療費」23.31%、失業・転職17.58%となっており、いずれも2017年調査より増加しています。
 

年金のみで生活できるのは5人に1人

SBIエステートファイナンス株式会社が、60〜65歳の持ち家所有者を対象に行った「老後破産に対する不安と老後の家計収支の状況」に関するアンケート調査では、将来年金(厚生年金と国民年金)のみで家計収支がプラスになると予測している人は、全体の19.5%でした。
 
また、年金に加えて、株式や不動産投資による副収入が見込める場合であっても、60%の人が、家計収支をプラスにできないと回答しています。
 
一方、老後破産への不安があると答えた人の割合は、年金以外の収入源がない場合が58.7%、確定拠出年金や株式などの配当収入、不動産収入などがある場合が26.7〜31.0%となっており、年金以外の収入源があることが、不安解消要素の一つになっていることがうかがえます。
 

高齢の生活保護受給者の9割以上が一人暮らし

厚生労働省の「令和3年度被保護者調査 年次調査(基礎・個別)」では、生活保護を受ける高齢者世帯のうち、92.1%が1人世帯であることが判明しました。
 
また、単身の生活保護受給者のうち、50.6%が70歳以上、65歳以上を含めると、62.4%を高齢者が占めていることも明らかにされています。
 
このことから、高齢者世帯の中でも、特に、単身世帯が生活苦に陥りやすいことがうかがえます。
 

老後破産回避のためにできることとは?

老後の生活苦を回避するためには、老後を迎える前に、以下をはじめとする対策を行って、老後資金確保の見通しを立てておくことが大切です。

●十分な貯蓄をする: 年金でまかなえない部分の資金確保
●老後の収入源を確保する:定年後の仕事継続/個人年金への加入 など
●金融資産を保有しておく:株式/不動産 など
●必要な保険に加入しておく:医療保険/介護保険 など
●資金に困った際の相談先を把握しておく:消費生活センター/ファイナンシャルプランナー/弁護士 など
●健康維持を心がける:医療介護費の膨張回避
●老後のマネープランを明確にしておく:定年退職後の子どもの教育費/住宅ローンの返済 など

さらに、老後を迎えた際、現役時代よりも下がる収入に、生活レベルを合わせられるかどうかも、老後破産回避のポイントとなるでしょう。
 

老後を迎える前の備えが老後破産回避のカギ

金融広報中央委員会が2020年に行った「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査]では、73.3%もの人が老後の生活を心配する理由として「年金や保険が十分でないから」と回答しています。
 
老後破産を回避するためには、ご紹介した「十分な貯蓄」や「老後の収入源の確保」をはじめとする、老後を迎える前の対策が重要です。
 
老後を、生活資金の不安なく過ごせるように、今から始められる対策について考えてみてはいかがでしょうか。
 

出典

厚生労働省 令和3年度被保護者調査 年次調査(基礎・個別)結果の概要
日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会 2020年破産事件及び個人再生事件記録調査
SBIエステートファイナンス株式会社 「老後破産に対する不安と老後の家計収支の状況」アンケート調査
金融広報中央委員会 知るぽると 「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査](2020年)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー