会社は給与を支払う際、従業員の労働時間を把握しておく必要があります。しかし、なかには、残業をする場合はタイムカードを押すことが暗黙の了解のような会社もあります。   こうした場合、仕事をしているにもかかわらず、残業代がつかないことをはじめ、さまざまなデメリットがあるのです。そこで、次から法的な問題と対処法について紹介していきます。

残業代がつかない


 
タイムカードを押して残業した場合のデメリットとしては、「残業代がつかないこと」が挙げられます。ただし、実際に働いた時間を客観的に証明するものがあれば、あとからサービス残業代を請求することが可能です。
 
客観的に証明するものとしては「パソコンのログイン・ログアウト記録」「シフト表」「会社があるビルへの入退館記録」などが挙げられます。労働基準法によって残業代請求の時効は5年と定められています。5年を過ぎると、残業代を請求することができないため、注意するようにしましょう。
 

労災保険制度の対象外になる

タイムカードを押した後にサービス残業をしていて、けがや病気をしたとします。この場合、労災保険制度の対象外です。通常、勤務時間中のけがや病気であれば、無料で治療が受けられることになっています。また、仕事に行けない日も休業補償として給料の約8割を受け取ることが可能です。
 
しかし、タイムカードを押してしまうと、勤務中ではないと見なされるため、こうした保険給付が一切受けられなくなってしまいます。
 
そもそも労働基準法37条によって、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた場合、会社は従業員に対して残業代(割増賃金)を支払う必要があります。そのため、残業代を支払わないためにタイムカードを押させる行為は、労基法37条違反です。もちろん、転職先で自分が上司になった場合、部下に強要することも同様に法律違反になります。
 

相談は労働基準監督署や労働条件相談ホットラインへ

転職先で「残業するならタイムカード押してからね」と強要された場合、労働基準監督署に相談することをおすすめします。というのも、労働基準監督署は賃金や労働時間などの法律違反に対応しているからです。
 
そのため、相談した内容によっては会社に調査に入り、是正勧告を行うこともあります。自宅の近くの労働基準監督署(都道府県労働局)については、厚生労働省の公式サイトに掲載されています。
 
また、厚生労働省の「労働条件相談ホットライン」を利用することも可能です。フリーダイヤルで、平日(月〜金)は17時から22時まで、土日祝日は9時から21時まで受け付けているため、勤務外の時間に相談しやすくなっています。1人で悩まずにこれらの公的な機関への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
 

サービス残業のデメリットを解消するためにも労働基準監督署に相談を

転職先でタイムカードを押さないでサービス残業をした場合、残業代をもらうことができません。ただし、実際に働いた時間を客観的に証明するものがあれば、サービス残業代の請求は可能です。
 
このほかにも、労災保険制度の対象外になるといったデメリットもあります。転職先で「残業するならタイムカード押してからね」と言われたら、労働基準監督署や労働条件相談ホットラインに相談することをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 労働基準情報:労災補償

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー