かつての日本では、夫が働いて専業主婦と子どもがいるという家庭が少なくありませんでした。しかし女性の社会進出が進み、徐々にそうした家庭も減りつつあります。共働きでなければ家計が厳しい世帯もある一方で、家庭によっては夫のみが働いているケースもあるでしょう。   今回は年収600万円で、専業主婦の妻と子どもを養うのは難しいかどうかについて考えます。

専業主婦世帯の平均的な家計収支

総務省統計局による「家計調査」から、専業主婦世帯の平均的な家計収支をみてみましょう。2023年の調査結果をみると、世帯主が60歳未満で、夫のみが働いており子どもが1人または2人いる世帯の平均消費支出額は、月あたり約30万4000円です。
 
この支出額を月あたりの平均実収入57〜58万円ほどでまかなっています。平均可処分所得は月あたり46〜47万円なので、毎月15〜16万円ほどの黒字となる計算です。
 

賃貸住宅に住むケースではさらに支出が増える?

専業主婦世帯の消費支出の内訳をみると、住居費が1万8000〜2万1000円ほどとなっています。持ち家率は7割を超えており、家賃を支払っている世帯が少数派であることが、毎月の住居にかかる費用が抑えられている理由です。言い換えれば、賃貸住宅に住んでいる世帯では、消費支出額を30万円程度に抑えるのは簡単ではないでしょう。
 
賃貸物件情報サイト「CHINTAI」では、取り扱っている物件の相場情報を開示しています。東京23区の3LDKの物件をみると、もっとも高いのは渋谷区で、家賃相場は55万円でした。もっとも安い足立区でも18万円です。東京23区でちょうど真ん中に位置する、いわゆる中央値は台東区で、家賃相場は27万5000円となっています(家賃相場はいずれも2024年3月1日時点)。
 
東京23区にある、3LDKの賃貸物件に住んでいると仮定してみましょう。家計調査の消費支出額から住居費を除いた28万円ほどに家賃相場の28万円を加算すると、毎月の支出額は合計で56万円です。
 
東京は家賃が比較的高いため、それ以外の地域では3LDKの物件でももっと安く借りられるところが多々あるでしょう。それでも、子どもがいる家庭では、毎月の支出が40万円台後半程度となるケースは珍しくはないと考えられます。
 

専業主婦世帯で必要な年収の目安

仮に専業主婦世帯の支出額を毎月45万円とすると、年間では540万円の支出となります。年収600万円の人の手取り目安は480万円ほどのため、支出が収入を上回ってしまう計算です。手取りが540万円となるためには、額面で670〜680万円ほどなければいけません。
 
これらは、あくまでも世帯主が60歳未満の専業主婦家庭における平均的な消費支出額に、東京23区内の3LDKの物件の家賃相場を加えた生活費をもとにした概算です。参考程度とはなりますが、夫の年収が700万円以上なければ毎月黒字で過ごすのは難しいでしょう。
 
コロナ禍以降日本でも生じたインフレが今後も継続した場合、さらに毎月の支出額が増え続ける可能性があります。そのぶん年収も上がればカバーできますが、賃金の上昇が追いつかないと生活が破綻しかねません。
 
夫の年収が600万円を超えたとしても、すぐに妻が仕事を辞めて専業主婦となるのは避けたほうが無難です。子どもの成長に伴いさらに支出額が増えることも予想されるため、可能な限り多くの収入源を確保しておくに越したことはないでしょう。
 

年収600万円で子どものいる専業主婦家庭の生活を維持するのは簡単ではない

妻が専業主婦で子どものいる世帯の、月あたりの平均消費支出額は30万円ほどです。3LDKほどの物件を借りている場合は、50万円前後となってもおかしくはありません。
 
45万円の支出でも年間では540万円となるため、手取り目安が480万円の年収600万円では赤字となります。少しでも黒字とするには年収で700万円以上は必要です。夫の年収が600万円を超えても、共働きでより多い収入を維持した方が、生活はだいぶ楽になるでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯2023年
CHINTAI 東京都の家賃相場情報
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー