子どもがいると、階下に響く足音や騒ぎ声などを気にせずに伸び伸びと過ごせるマイホームが欲しくなるという人も多いでしょう。子どもが3人目ともなるとなおさらではないでしょうか。   本記事では、月々の返済が厳しいからと50年ローンを検討している家庭を取り上げます。35年ローンも「絶対に無理」というわけではなく迷っているようですが、実際のところどちらがおすすめなのでしょうか。解説します。

50年ローンとは

50年ローンとは、文字どおり50年かけて返済していく住宅ローンのことです。住宅ローンの返済期間は35年が一般的であるイメージですが、住宅価格の高騰が続く現代においては、50年ローンを選択せざるを得ない人も増えてきているようです。
 
これまで50年ローンは、「フラット35」を取り扱う住宅金融支援機構や、地方銀行、信用金庫などで主に提供されてきました。しかし、2023年にはネット銀行や大手銀行として初めて、住信SBIネット銀行が50年ローンの提供を始めています。それだけ需要があるということでしょう。
 

50年ローンのメリット

50年ローンを利用する最大のメリットは、返済期間を延ばすことで毎月の返済額が少なくなることでしょう。
 
例えば、4000万円を年利1.5%で借り入れた場合、返済期間35年では毎月の返済は約12万2000円必要です。しかし、返済期間を50年まで延ばせば約9万5000円まで下がります。
 
年収500万円であれば、手取りは多くて400万円ほどなので月々の収入は33万円ほど(ボーナス含む)になります。その状況で支出が3万円近くも浮くとなれば、50年ローンに魅力を感じてしまうのも当然かもしれません。
 
また、住宅ローンの名義人が死亡または高度障害になった場合に、住宅ローンの残債が0になる「団体信用生命保険(団信)」に長く加入できます。29歳で50年ローンを組むと完済年齢は79歳になるので、35年ローンより団信の保証を長く利用できる可能性が高くなるでしょう。
 

50年ローンのデメリット

反対に50年ローンのデメリットは、返済期間が長くなることによって当然ながら利息がかさむので、返済総額が多くなります。前述の例では、35年ローンで返済総額5150万円ほどのところ、50年ローンでは5700万円ほどになります。
 
また、繰り上げ返済ができなかった場合には79歳まで住宅ローンの返済が続きます。まだ仕事があればよいですが、なければ年金から月10万円近くも返済に回さなければなりません。老後生活が苦しくなることは容易に想像できますね。
 
最後に、離婚など予定外にマイホームを手放さなければならなくなった場合、返済期間が長いほど元本の減少よりも住宅の価格低下が進んでしまい、住宅ローン残高が売却金額を上回る可能性が高くなります。
 

まとめ

年収500万円の29歳、子どもが3人いる状況で4000万円の50年ローンはやめたほうがよいかもしれません。
 
これから年収がうなぎのぼりになっていくのであれば別ですが、繰り上げ返済ができる見込みがなく、35年ローンでの返済も厳しいのであれば、マイホーム購入を見送ることをおすすめします。なぜなら、子ども3人分の教育費と老後資金を工面できない可能性が高いからです。
 
まずは、共働きで世帯収入を上げる、頭金を貯める、購入金額を下げるなどの工夫が必要でしょう。
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士