奨学金の返還が困難なことを理由に自己破産する「奨学金破産」。自己破産すれば本人の返還義務はなくなるものの、人的保証の場合は保証人や連帯保証人に返還義務が生まれることとなります。   このように奨学金制度には利用上の注意点が複数存在するため、将来に不安を抱えている人は多いのではないでしょうか。本記事では、奨学金の平均借入総額や、返還するのに必要な期間を見ていきます。

奨学金240万円は平均より多い?

そもそも「奨学金240万円」という金額は、平均と比べて多いのでしょうか。まずは奨学金制度を利用している人の平均借入総額を確認してみましょう。
 
労働者福祉中央協議会が2022年9月に実施した「奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書」によると、平均借入総額は310万円です。奨学金の種類別では「有利子」が約6割、「無利子」が約5割を占めており、有利子と無利子を併用している人も一定数見られます。
 
金額別では「200〜300万円未満(25.8%)」が最も多く、次いで「100〜200万円未満(19.5%)」と「300〜400万円未満(17.0%)」となっています。
 
以上の結果をふまえると、「奨学金240万円」は平均借入総額の310万円を下回ってはいるものの、「240万円しか借りていない」と言えるほど少ないものではありません。最も割合が多い「200〜300万円未満(25.8%)」に位置していることからも、多すぎず少なくなくもない平均的な数字といえます。
 

240万円を返還するのに必要な期間は?

続いて、240万円の奨学金をすべて返還するのに必要な期間を確認してみましょう。定額返還方式か、それとも所得連動返還方式かによっても期間は変わりますが、ここでは奨学金の借入総額で毎月の返還額が決まる定額返還方式を想定して考えていきます。
 
独立行政法人日本学生支援機構が公表している奨学金返還年数算出表をもとに計算すると、240万円の奨学金をすべて返還するのに必要な期間はおおよそ15年です。15年は月に変換すると180ヶ月となるため、毎月平均で約1万3000円を返還し続ける計算になります。
 
なお、労働者福祉中央協議会の調査によると、奨学金制度を利用している人の平均返還額は月額約1万5000円です。返還の負担感については、「余裕がある」はわずか1割程度にとどまっており、「何とかなっている(45.9%)」もしくは 「苦しい(44.5%)」と感じている人が大多数を占めています。
 
苦しいと答えた人の中には「かなり苦しい(20.8%)」と感じている人も一定数見られ、多くの人にとって奨学金の返還がそれなりの負担となっている様子が伺えます。
 
奨学金240万円の場合でも毎月平均で約1万3000円、15年ほどの長期間にわたって返還し続ける必要があるため、生活の状況次第では返還が負担になる可能性は十分に考えられます。
 

240万円の奨学金を返還するのは決して楽ではない

奨学金240万円は平均を下回ってはいるものの、それでもすべて返還するには15年ほどの期間が必要になります。
 
収入や生活状況次第では、月額約1万3000円の返還が大きな負担となる可能性が十分に考えられるため、240万円の奨学金をすべて返すのは決して楽ではないと理解しておきましょう。返還が難しい場合には、毎月の返還額を減らしたり、返還を先送りにしたりするのもひとつの方法です。
 

出典

労働者福祉中央協議会 奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書
独立行政法人日本学生支援機構 返還期間と割賦金
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー