高齢の親が大きな金額のタンス預金をしていることが分かった場合、どうすればよいのでしょうか。親が多くの資産を持ってくれていてうれしい反面、タンス預金は銀行預金と比べ、さまざまなリスクがあるため、注意が必要です。   「タンス預金は税務署にバレるとまずい」という意見を目にすることは多いですが、なぜそのように言われているのでしょうか。   本記事ではタンス預金の持つリスクについて解説します。ぜひ参考にしてください。

タンス預金自体がまずい訳ではない

「タンス預金という行為自体が悪」と捉えられることも多いですが、タンス預金自体に問題はありません。誤解されやすい点といえますが、タンス預金が「相続税逃れ」や「所得隠し」の温床となりやすい点が問題視されているのです。
 
結果的に税金逃れにつながってしまった場合には、悪意があって行ったかどうかに関わらず、追徴課税を受ける可能性があります。
 
また、タンス預金は防犯の観点においても好ましくありません。
 

高額な現金を自宅で保管するリスク

高額なタンス預金のリスクについて、いくつか紹介します。
 

盗難や災害によるリスク

現金を保管している以上は、空き巣や強盗など盗難に遭うリスクがあります。また、犯人に遭遇して襲われてけがをしてしまう危険性もあります。
 
さらに、地震や台風をはじめとした災害リスクも常に存在します。火事や洪水が起こった際にも失われる可能性が高いです。加えて、現金は火災保険や地震保険の補償対象ではないため、そうした災害で失ってしまうと、二度と戻ってこない資産となります。
 

誤って処分されてしまうリスク

タンス預金では、名称の通りタンスをはじめ金庫や机などに現金を保管します。ほかにはかばんなどにも現金をしまうこともあるでしょう。すると、家族が不用品だと思って処分してしまう可能性があります。あるいは、保管場所を勝手に移動させてどこにしまったのか忘れてしまう可能性もあるでしょう。
 
また、タンス預金を長く続けていると、本人すら保管場所を忘れてしまう可能性があります。特に所有者が高齢になった場合には、認知機能の低下も起こりやすく、リスクは増大します。
 

主な税務調査のタイミング

税務調査は、相続税の申告のタイミングなどで行われることが多いようです。相続税は高額となるケースも多く、申告漏れが生じやすいことから、税務調査が入る可能性が比較的高いといわれています。
 
国税庁の「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」を参考にすると、行われた実地調査件数8196件に対して、7036件が申告漏れ等を指摘されており、その割合は85.8%と非常に大きな数字となっています。
 

タンス預金より銀行預金の方がリスクは低い

ここまでタンス預金の危険性について記載しました。タンス預金には「相続税逃れ」や「所得隠し」といった疑いをかけられるリスクや、災害・盗難のリスク、誤って処分されるリスクなど、さまざまな危険性が付きまといます。
 
やはり預金は大きな金額を自宅に置いておかず、銀行に預け入れるようにすると良いでしょう。
 
銀行預金をしておくと、相続の発生時に資産総額を明確にしやすく、遺産分割時のトラブルを避けやすい利点も存在します。高齢の親がタンス預金をしていることが分かった場合には、意思判断能力のあるうちに、早めに適切な行動を取るようにしましょう。
 

出典

国税庁 令和4事務年度における相続税の調査等の状況
 
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート