理系の大学院は専門的な知識や技術が身につくだけでなく、文系が多い総合職とは別に、技術職として就職できる企業が増えるといったメリットがあります。特に研究職に就くには、大学院での研究経験が必須条件になっていることが多いです。   子どもの将来の選択肢を広げる大きな機会になることは間違いありませんが、お金の負担が少なからず大きくなるのが現実です。しかし、子どもが自分で決めた道を、親は何としてでも後押ししてあげたいと思うのでしょう。   本記事では、国立と私立の大学院の各学費を始め、2024年から始まった大学院の授業料後払い制度についても合わせて紹介します。子どもが2024年度から大学院を志望している方はぜひ参考にしてみてください。

大学院の「修士課程」と「博士課程」

大学院には修士課程と博士課程があります。学部を卒業した後、就職せずに研究をしたい方は2年間(最大4年)の大学院の修士課程(博士前期課程)へ進み、修了時に「修士」の学位が授与されます。
 
さらに高度な研究を追求したい方は3年(最大6年)の博士課程(博士後期課程)へ進み、修了すると「博士」の学位が授与されます。博士前期課程へ進むには、「学士」の学位の取得が必要で、博士後期課程へ進むには、「修士」の学位の取得が必要です。なお、学部卒業後に入学できる5年一貫の博士課程もあります。
 

国立大学院の学費

文部科学省令の「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」によって定められた国立大学院の授業料と入学料と検定料の標準額を表1にまとめました。
 
国立大学の学部と大学院を比べてみると、1年間の授業料と入学料の標準額はほぼ同じです。国立大学院の博士前期課程(2年制)に進む場合は約139万円かかります。
 
さらに博士後期課程(3年制)に進む場合はプラスで約192万円です。大学院はトータルで約332万円かかることを頭に入れて考えておくとよいでしょう。また、研究費用や生活費などの諸経費も発生しますので、余裕は必要です。
 
表1

1年間の授業料 入学料 検定料
53万5800円 28万2000円 3万円

※文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」を基に筆者が作成
 

私立大学院の学費

文部科学省が調査した、私立大学院の令和5年度入学者に係る学費の結果を表2にまとめました。
 
博士前期課程の1年間の授業料は約80万円で、博士後期課程の1年間の授業料は約61万円です。私立大学院の博士前期課程(2年制)に進む場合は約195万円かかります。
 
さらに博士後期課程(3年制)に進む場合はプラスで約211万円かかります。トータルで約406万円となります。私立大学院でも研究費用などの諸経費は発生します。
 
表2

1年間の授業料 入学料 施設設備費
博士前期課程 79万8465円 20万1752円 7万5589円
博士後期課程 60万4592円 19万2686円 4万9733円

※文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」を基に筆者が作成
 

学費を抑える「高等教育の修学支援新制度」とは

「高等教育の修学支援新制度」とは家庭の経済状況に関わらず、専門大学・短期大学・大学へ進学できるチャンスを確保するために、給付型の奨学金に加え、入学金と授業料の減免もセットにした国の支援制度です。
 
対象者は住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯であること、学ぶ意欲がある学生であることが条件です。日本学生支援機構のホームページで対象者かどうかを知るためのシミュレーションができるので、ぜひ試してみてください。
 
また、2024年度から「高等教育の修学支援新制度」に大学院の授業料後払い制度が追加されました。大学院の授業料後払い制度とは、大学院修士課程の在籍者が在学中の授業料を国に立て替えてもらい、大学院修了後の所得と子どもの有無および人数に応じて月々の納付額が抑えられる貸与型の制度です。
 
子育てで最もお金がかかるのは、義務教育後の高校生・大学生の時期です。特に大学は多額な学費に悩む親が多いのではないでしょうか。そんなときは、少しでも奨学金などの国の支援制度について知ることが大事といえるのではないでしょうか。
 

出典

文部科学省 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等結果について
文部科学省 高等教育の修学支援新制度
日本学生支援機構 進学資金シミュレーター
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー