生活の豊かさを語る際、年収と幸福度の関係はよく話題に挙がります。一定以上の年収になると、幸福度が上がりづらいと聞いたことがある方も多いでしょう。   誰もが幸福度を上げたいと思って生活しており、幸福度を上げるために仕事をがんばっている方も少なくありません。そんな方にとっては、見逃せない問題のはずです。   そこで本記事では、年収と幸福度の関係性やより幸福度を上げる方法、一定以上の年収に対する幸福度の変化について解説します。

幸福度とは?

内閣府の幸福度に関する研究会によると、以下の3点を基本的な柱にしつつ幸福度を指標化して判断しています。
 

・経済社会状況
・心身の健康
・関係性

 
ただし、これは国家としての幸福度の指標であり、個人が感じる幸福度とは前提が違うともいえます。社会規模や国家規模での指標であり、比較を目的にしています。
 
個人の幸福度は非常に主観的で、幸福度を測る基準や重点を置く要素も人それぞれです。居住環境や人間関係など多種多様な要素が考えられますが、それでも欠かせないのが収入などの経済状況です。経済状況、端的に言えば年収を1つの指標やきっかけにして、個人の幸福度を測るケースは多くあります。
 

本当に幸福度は年収800万円から変わらない?

年収と幸福度の関係が一躍注目を浴びるようになったのは、プリンストン大学のアンガス・ディートン教授によって公開された研究結果の発表によると思われます。アンガス・ディートン教授は、2015年にノーベル経済学賞を受賞しています。
 
研究結果によると、日本円で年収800万円までは幸福度が年収と共に上がっていたものの、800万円を超えると幸福度に大きな変化は見られなくなったそうです。日本でも内閣府による2022年の満足度・生活の質に関する調査で、似たような調査結果が出ています。
 
この調査は年収階層ごとに雇用賃金の満足度を指標化してグラフにしたもので、厳密には年収を基に幸福度を直接的に表したものではありません。
 
しかし、アンガス・ディートン教授の研究にもあるように年収と幸福度には一定の関連性があることから、年収と幸福度の関係を読み解く資料として問題ないでしょう。
 
調査結果を見ると、年収800万円を含む700万円以上1000万円未満までは基本的に大きくポイントが上がっていますが、1000万円以上からは上昇率が激減していることがわかります。全く変わらないとはいえませんが、幸福度や満足度は小さな変化にとどまっていることは事実です。
 

幸福度を上げるには?

年収では幸福度に限界がある以上、幸福度を上げる要素を年収以外に見いだすことが大切です。幸福度の判断基準を別に作るイメージです。
 
幸福度の判断基準を複数用意しておけば、収入などに依存せず安定した精神状態を保てるなどのメリットもあります。幸福度の指標が1つしかない状態だと、良い結果が出ない場合に大きなストレスを感じる原因になります。リスクは分散させて、逃げ道は多く持っておく方法がベターといえるでしょう。
 
幸福度を上げる要素の例は、以下の通りです。
 

・友人関係
・心身の状態に合った仕事
・家族などの家庭環境
・仕事へのやりがい
・趣味
・ゆとりのある時間

 
幸福度は主観的なものであるため、年収はあくまでも要素の1つです。自分が大切にしたい幸福度の要素を模索しつつ、高めていくことで幸福度は上げられるでしょう。
 

自分なりの幸福度の指標を持つことが大切

人それぞれではあるものの、いくつかの調査や研究によると年収800万円で幸福度の上昇率が減少するのは事実です。そのため幸福度だけを求めて年収を上げるのは、コスパが悪いとも言えます。
 
幸福度は主観的であり、指標は年収だけではありません。幸福度をより高めていくには、年収以外にも自分なりの幸福度の指標を持っておくことが大切です。年収による幸福度の上昇が見込めなくなっても、他の要素で幸福度を上げられます。
 

出典

幸福度に関する研究会 幸福度に関する研究会報告
Daniel Kahneman and Angus Deaton High income improves evaluation of life but not emotional well-being
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー