仕事を辞めたのに住民税の支払い通知が届いて困っている。そんな話をまれに相談の中で聞くことがあります。そこで、なぜ仕事を辞めた後も住民税は発生するのか。その理由について解説していきます。

住民税は時間差で遅れてやってくる

住民税は所得税と異なり、時差があって発生します。例えば、一般的な会社員であれば、所得税は毎月の給与から概算の額が引かれます。そして過不足については年末調整で戻ってきたり、逆に支払ったりという形で調整します。
 
しかし、住民税は時間差で生じます。住民税は前年1月1日から12月31日までの収入を基準に当年6月から翌年5月の1年間にかけて12分割して支払っていきます。そのため、年の途中で仕事を辞めても毎月住民税は発生し続け、前年の収入を基にした住民税を仕事を辞めた後も払い続けるということになるのです。
 
ただし、退職時期や会社の方針によっては、翌年5月分までの住民税を一括して最後の給与から控除して支払うということも可能な場合があります。
 
なお、基本的に住民税を退職後も払い続けることになるのは、「1月1日から5月31日までの間に退職しているが給与額が不足していた」場合や、「6月1日から12月31日までの間に退職した」場合、あるいは「住民税を徴収しないよう本人が希望していた」といったケースのうちどれかになります。
 

住民税が高く感じられるのはなぜ?

人によっては住民税が高いと感じられることもあるかもしれません。それもそのはずで、住民税の税率は課税所得の約10%となっているからです。
 
もちろん、この税額は家族構成や医療費控除の有無など個別の事情によっても異なります。ご自身の場合は税額がいくらになるのか、確認してみてもいいかもしれません。
 

住民税の支払いが難しい時は?

一般的に住民税は納付書に記載された期日までに記載された額を納付しなければならず、減免や猶予といった制度はありません。しかし、自治体によっては事前に相談することで一定の要件の下、減免や猶予といった制度があります。
 
例えば、姫路市の例でいえば、前年中の合計所得金額が600万円以下であり、かつ失業あるいは廃業してから3ヶ月以上経過している状態で、引き続き無職で納付困難な場合には減免される場合があります。
 
住民税は滞納すると、自身の財産が差し押えられたり延滞税が発生するなど不利益が発生します。支払いが難しいと感じたら、速やかに住民税の納付先となる自治体に相談することが大切です。
 

まとめ

住民税は前年の所得に基づき6月から翌年5月の間に支払うことが原則です。そのため、会社の退職時期や給与の額によって給与から住民税を引き切れないと、退職後も引き続き住民税を支払い続けることになります。
 
住民税について気になる点があれば、住民税の納付先となる自治体にご相談ください。
 

出典

中野区(東京都) 住民税の具体的な計算例
姫路市(兵庫県) FAQ 私は会社に勤めており、住民税は毎月給料から差し引かれていました。8月末に会社を退職し現在は無職ですが、先日、住民税の納税通知書が送られてきました。退職後も住民税がかかるのはなぜですか。
 
執筆者:柘植輝
行政書士