会社員の方が「起業をしたい」と考えたとき、「今ある安定を捨ててよいものか」と不安になるのは珍しいことではありません。変化に対し、身構えてしまうのは当然のことです。   不安を完全に拭い去ることはできないとしても、事前準備をすることによって、その不安を軽くすることはできるかと思います。そこで本記事では、会社員の方が起業前にやっておいたほうがよいことについて解説します。

事業計画・資金計画を立てる

起業をするための事前準備として、まずは事業計画・資金計画を立てることをおすすめします。事業計画や資金計画がなくても起業をすることは可能ですが、「起業前にやれることはやっておきたい」「不安を少しでも減らしたい」と思われるのであれば、これらの計画は立てておいたほうがよいでしょう。
 
事業計画を立てるに当たって、押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
 

・起業の目的は何か
・自分の強み・弱みは何か
・事業内容をどうするか
・ターゲットをどうするか
・外部環境(業界・業種の環境)はどうか

 
事業計画を立てたら、その計画に合わせた資金計画を立てたいところです。資金計画を立てるに当たって、押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
 

・起業資金はどれくらいか
・売上高はどれくらい見込めるか
・費用はどれくらいかかるか
・利益はどれくらい上がるか
・どれくらいで軌道に乗るか

 
ただし、計画はあくまで計画です。実際に起業してみたら、想定と異なることも多々あると思います。そのような場合、計画を修正・変更する必要があります。計画に柔軟性を持たせる、あるいはコンスタントに計画を見直すなどの工夫も必要でしょう。
 

起業資金を準備する

事業計画・資金計画のめどが立ったら、起業に必要な資金を準備していく必要があります。起業に必要な資金として、設備資金や運転資金が考えられます。設備資金とは、事業を始めるに当たっての初期費用に充てるための資金、運転資金とは、事業を続けていくための資金です。
 
個人事業主として起業するのか、会社を設立するのかで必要となる金額は異なるでしょうが、いずれにしても、起業に際しまとまった資金を確保しておく必要があります。
 
資金を確保するための手段として、以下のことが考えられます。
 

・預貯金
・補助金・助成金制度を利用する
・融資を受ける
・クラウドファンディングを利用する

 
上記のうち、起業前にやっておいたほうがよいことは、預貯金ではないでしょうか。起業するとき、事業を行うときに、キャッシュ(現金)は欠かせません。まずはキャッシュを貯めておくということが必要です。
 
また、起業して間もないうちは、「自分のお金」と「会社のお金」の線引きが難しく、「自分のお金」を消費しがちです。ですから、なるべく多く預貯金を用意しておくことをおすすめします。
 
ご自身が起業するに当たり、補助金・助成金制度が利用できるかを確認しておくこともよいでしょう。補助金・助成金は借り入れとは違い、原則として返済義務がありません。その分、利用できる方が限定されていますが、ご自身が利用できるのであれば利用しない手はないと思います。
 
場合によっては、融資を受けることを検討する必要があるかもしれません。日本政策金融公庫には「創業支援貸付利率特例制度」があり、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方に対し、各融資制度に定める利率を「−0.65%(雇用拡大を図る場合は「−0.9%」)」して融資をしてくれます。
 
融資を受けるにしても、優遇制度を利用できないかを確認しておくことも必要ではないでしょうか。
 

まとめ

「将来のことは分からない」というのは誰でも同じです。しかし、「だから何もしない」のと「だから計画を立てて準備する」のでは、その後に大きな違いが生まれます。
 
本記事では、不安があるなかでも起業したいと思われている会社員の方に対し、起業前にやっておいたほうがよいことについて解説をしました。本記事を読んで、少しでも前向きになっていただければ幸いです。
 

出典

日本政策金融公庫 新規開業資金
日本政策金融公庫 創業支援貸付利率特例制度
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー