■バブル崩壊後高値を更新



今週の日経平均は1420.05円高(+4.83%)の30808.35円と6週続伸。週末まで7日続伸し、負けなしの週となった。1−3月期決算の発表は週初で一巡したが、その後も東証プライム市場の主力株を中心に日本株の上昇の勢いは止まらず、日経平均は週半ばには3万円を回復、週末にはバブル崩壊後の高値を更新した。東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)1倍割れ改善要請や米著名投資家の日本株への追加投資表明、日銀の金融緩和継続などを背景に、海外投資家が消去法的に日本株の資産配分比率を増やす動きが続いたもよう。また、地方選での日本維新の会の躍進による政治改革期待や先進国首脳会議G7広島サミットに伴う日本への関心なども、日本株投資ムードを高める上では追い風になったとの声も聞かれた。



岸田文雄首相が米台韓の半導体大手と面会し、日本への投資を要請したことに加え、米マイクロン・テクノロジーが日本政府から2000億円の支援を受けて広島工場で次世代DRAMを量産する方針などと伝わった。半導体を巡るポジティブな報道が相次ぐなか、半導体を中心としたハイテク株が指数をけん引した。また、週末には対ドルで前週末比3円以上も円安が進行するなど為替の追い風も吹き、輸送用機器なども買われた。



■米債務上限問題や米エヌビディア決算に注目



来週の東京株式市場は上昇一服か。日経平均の上昇が止まらない。5月限オプション取引特別清算指数(SQ)算出を通過したほか、決算発表も一巡し、手掛かり材料難のなかでの躍進劇であり、これには舌を巻かざるを得ない。背景としては東証によるPBR改善要請や米著名投資家バフェット氏の追加投資表明、新日銀体制下での追加緩和継続などがある。足元の日本株の世界株に対するアウトパフォームは鮮明で、日本株の持たざるリスクを意識せざるを得ないとの指摘もある。



しかし、上昇ペースはスピード違反級で、バブル崩壊後の高値更新によりさすがに達成感もより強く意識される。また、今週半ば以降は東証プライム市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数がほぼ拮抗するなか、値がさ株など指数寄与度上位の銘柄の上昇が指数をけん引しており、それまでの現物主体の動きから先物主導の動きに変化しつつあることも気掛かり。実際、18日から先物の取引高は急増している。現物買いの一服も想定されるなか、目先は大幅調整とまでは言わずとも小休止を想定しておいた方がよいだろう。



楽観的な見方が広がりはじめていた米連邦政府の債務上限問題についても、週末には交渉が一時停止され、合意には程遠い状況が伝えられている。欧米外資証券などは、米財務省が法定の連邦債務上限のもとで、6月上旬ころには現金と特別措置の能力を使い切る可能性があると指摘している。「Xデー」が近づくなか、債務上限交渉の進展が遅々としたままであれば、相場のボラティリティーは高まろう。その際には、リスク回避の円買いが日本株の調整要因として働くことも考えられる。



一方、今週末のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言は安心感を誘う。今週は連銀総裁から利下げはおろか、追加利上げを示唆する発言が相次ぎ、前回の5月会合での利上げ停止を見込んでいた市場は期待の修正を迫られていた。ただ、パウエル議長は銀行の貸し渋りなど信用収縮がもたらす金融引き締め効果を指摘し、6月会合の利上げ停止を示唆した。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が近づくなか、市場の波乱材料が一つ取り除かれたことはサポート材料となろう。



来週は23日に米5月購買担当者景気指数(PMI)が発表される。今週発表された米経済指標は総じて底堅く、経済のソフトランディング期待が高まっている。PMIは経済指標の中でも先行性が高く注目度も高い。今回の結果が予想を下回れば、パウエル議長の発言ですでに追加利上げ観測が後退しているなか、予想比下振れは景気後退懸念の再燃につながり得る。



ほか、米国では24日にFOMC議事録(5月2−3日開催)が公表され、26日には米4月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが発表される。議事録で改めてFRBの利上げ停止スタンスへの傾きが確認されれば株式市場のサポート要因となろう。また、これまでの物価指標が総じて予想を下回っていたことを踏まえれば、米4月PCEコアデフレーターもマイルドな結果が予想され、その場合は翌週以降のグロース(成長)株の支援材料となろう。



24日に発表されるエヌビディアの決算も重要だ。年後半の半導体市況の底入れや生成AI(人工知能)需要への期待を背景に同社株価は上昇トレンドを形成している。ただ、株価は2022年10月安値からすでに3倍近い水準にまで上昇し、21年11月高値を窺う展開となっている。日本の半導体企業でもアドバンテスト<6857>やディスコ<6146>は上場来高値圏にある。これまで半導体を中心としたハイテク株が指数をけん引してきただけに、エヌビディアの決算を機に一段高となるか、利食い売りが強まるかは今後の市況全体のムードも左右しよう。



■5月都区部消費者物価指数、米PCEコアデフレーターなど



来週は22日に3月機械受注、23日に4月全国百貨店売上高、米5月製造業PMI、米4月新築住宅販売、24日にFOMC議事録、25日に米1-3月期GDP改定値、26日に5月都区部消費者物価指数、米4月PCEコアデフレーター、米4月耐久財受注、などが予定されている。