■業績動向



トヨクモ<4058>の2022年12月期業績(非連結)は、売上高で前期比32.6%増(前期を新収益基準で換算した値との比較)の1,937百万円、営業利益で同52.8%増の639百万円、経常利益で同51.5%増の638百万円、当期純利益で同48.9%増の427百万円となった。同社は2022年2月に期初計画として売上高1,890百万円、営業利益530百万円を提示したが、2022年11月の第3四半期決算発表時に、これを売上高1,930百万円、営業利益600百万円へと上方修正し、おおむねその上方修正計画に沿った着地となった。売上高としては、安否確認サービス、kintone連携サービスがともに良好に推移した。営業利益が期初計画比で上振れとなったのは、同社の想定より売上高が伸長したことに加え、人件費の伸びを少なく抑えられたことが要因となった。



2022年12月期の売上高については、成長率こそ過去数年間と比べて鈍化したものの、引き続き2ケタ成長が続いている。サービス別売上では、安否確認サービスが同27.3%増の755百万円、kintone連携サービスが同36.7%増の1,178百万円であり、ともに良好に推移している。売上総利益は同33.9%増の1,877百万円であり、売上総利益率は96.9%と高水準が維持できている。売上原価が前期比で少なく収まっているのは、収益認識基準の適用でkintone連携サービスに関連する仕入原価が減少したためである。営業利益率は33.0%となった。人件費や広告宣伝費が継続的に増加しているが、引き続き大幅な増収増益であり、弊社では良好な決算であったと捉えている。



同社の2022年12月期の期初広告活動予算は500百万円(2021年12月期実績は368百万円)、各四半期のウェートは、第1四半期:第2四半期:第3四半期:第4四半期=20%:20%:30%:30%という計画であった。実際に計上された2022年12月期の広告宣伝費は509百万円であり、予算を順調に消化した形となった。ただし、同社ではテレビCMなどのマス広告についてコンテンツを再考することが必要と考えている。今まではCMを行うことによる会社のブランディング的な側面が強かったため、今後はよりプロダクトの売上増加に直結するようなマーケティング戦略へかじ取りを行う計画である。



同社が重要視しているKPIについては、2022年12月期末の有償契約数は11,264件(前期末比2,323件増)となった。サービス別の有償契約数は、安否確認サービスが3,125件(同428件増)、kintone連携サービスが8,139件(同1,895件増)であり、ともに順調に推移した。有償契約数の伸び率は、2022年12月期は26.0%増となった。有償契約数の鈍化は将来の売上成長率の低下に直結するため、売上成長を再加速するための新たな取り組みを進めている。チャーンレートは0.61%であり、kintone連携サービスの一部でスポット案件が終了した影響が見られたものの、低水準が維持されている。個別サービスのLTVの合計値では、2021年12月期第1四半期の253億円から2022年12月期第3四半期の531億円まで順調に拡大が続いたが、同第4四半期は477億円へと縮小した。チャーンレートの悪化がLTVの合計値が縮小した要因であるが、同社のチャーンレートはもともと1%未満と非常に低いため、同社ではチャーンレートは今後も安定して低水準で推移すると見込んでいる。



同社は、毎月15日前後に月次売上の速報値を発表している。2021年から2022年3月頃までは前年同月比で40%を超える高い売上成長が続いていたが、その後はやや成長率が鈍化傾向にあり、2023年1月は同27%増、2月は同26%増となった。ただし、同社の2023年12月期の売上高成長率予想は前期比20.3%増となっていることから、会社計画に対しては順調にスタートしていると言えるだろう。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)