■中期経営計画



1. 中期経営計画「Road to 2025」

USEN-NEXT HOLDINGS<9418>は、音楽配信で培った顧客基盤などの経営資源を生かし、価値創造プロセスをより高度化することで、店舗・施設やライフスタイルのDXを推進することを目標としている。一方、既存事業の収益力・成長力の強化、M&Aなどを活用した非連続成長、規律を維持した柔軟な財務戦略、安定・継続的な株主還元を推し進めることで、企業価値の向上を目指している。同社は、「未来を今に近づける“ソーシャルDX”カンパニー」へと進化していくことをパーパスとし、その実践に向けて2022年2月に中期経営計画「Road to 2025」を策定した。



中期経営計画では、コロナ禍やウクライナ情勢などによる外部環境の変動を考慮し、下限目標のベースケースと達成目標のアップサイドケースという2つのシナリオに分けている。どちらのシナリオにおいても、営業利益で2ケタ成長(4年平均成長率で9.0%〜12.5%)を目指し、2025年8月期には連結営業利益で220億円〜250億円を達成する計画である。同社の場合、セグメントごとに市場特性や成長性が異なるため、セグメント別の戦略が重要なポイントとなるが、基本的には従来のものをバージョンアップした戦略となっている。



営業キャッシュ・フローについては、着実な利益成長と的確な財務戦略により、策定時の157億円から最終年度には210億円〜240億円へ引き上げる計画である。4期累計で800億円超の営業キャッシュ・フローが創出されることになる。同社はこれを事業投資に400億円超、借入返済に150億円超、配当金に40億円超投入する計画で、残りの160億円超に関しては成長投資に使う意向である(バッファーを除く)。使い道として想定されるのは、「Paravi」など大型のM&Aや新規事業開発で、「ソーシャルDXカンパニー」として相応しいものになると考えられる。開発対象は、店舗・施設やライフスタイルのDX、日本の生産性改善のバックアップ、エンターテイメント分野のデジタル化などに関連する事業になると推測され、M&Aも既存事業周辺の案件に限り、異業種・異分野のものは扱わない方針である。



財務目標として、レバレッジを活用した効率的な経営を継続し、ROE20%程度を維持しながら自己資本比率を30%〜40%へと改善する計画である。また、レバレッジ・レシオやD/Eレシオの圧縮を継続し、常に十分な資金調達余力を確保する考えである。これにより、さらに大きな成長投資にも機動的に対応できるようになるだろう。なお、同社は「“ソーシャルDX”カンパニー」としてサステナビリティも重視しており、環境問題や社会課題の解決に向けた取り組みを推進する考えである。なかでも優先的に取り組む課題として、「環境負荷の低減と循環社会への貢献」(環境)、「イキイキと働ける環境による、すべてのステークホルダーとの共栄」(社会)、「変化・進化をし続ける、健全で透明性の高い経営」(企業統治)、「テクノロジーで人々を、街を、社会を幸せに」(事業)という4つを重要テーマとして掲げ、サステナブルな企業成長、サステナブルな社会を実現する方針である。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)