米国での印象派絵画の国際的な広がりに注目した巡回展「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」の東京会場が7日、東京都美術館で閉幕した。20日からは郡山市立美術館で郡山会場が始まる。美術雑誌などでも取り上げられ、連日多くの人が訪れた東京会場の様子を取材した。(小泉文章)
 「印象派」という言葉が生まれて、今年で150周年。1874年、クロード・モネの港を描いた絵を見たフランスの批評家ルイ・ルロワが「印象」という言葉を用いて風刺的な評論を新聞に書いたことが発端となった。その後、画家らも印象という言葉を使うようになり、自らを「印象派」と名乗り始めた。
 会場に入ると、その先駆けとなったフランスの画家らの作品が並ぶ。農村や田園風景などフランスの自然が多く描かれており、柔らかな光や木々の陰影から、画家らが見た景色や空気が伝わってくるようだ。
 今回、展示されている作品の多くは、米マサチューセッツ州にあるウスター美術館に収蔵されている。同美術館は、美術館として世界で初めて、モネの代表作である「睡蓮(すいれん)」を購入したことでも知られる。その「睡蓮」の前に立つと、水面(みなも)の鮮やかな青色に吸い込まれそうな感覚になった。緑や紫で表現された葉や陰影も美しい。
 絵のそばには、美術館と「睡蓮」を販売した画廊との手紙や電報が並んでいた。「美術館用の特別に低い価格なので内密に」「購入の決断を次の理事会まで待ってもらえないか」。生々しいやりとりに緊張感が伝わる。
 会場には、米国に渡った印象派を象徴する作品も多く並んでいた。その代表ともいえるチャイルド・ハッサムの「花摘み、フランス式庭園にて」。色とりどりの花があふれる庭園にたたずむ女性が力強い筆遣いで描かれている。ハッサム以外の画家の作品にも、グランドキャニオンなど米国らしい雄大な景色のほか、人物画にも印象派の技法が使われており、描き方が大きく発展したことがうかがえる。
 会場内には写真が撮れるフォトスポットが多く設置されていたほか、音声ガイドのナビゲーター役を声優の速水奨さんが務めるなど、絵画鑑賞をより楽しめる工夫が充実していた。
 郡山会場での展示は、もう間もなく始まる。普段から美術に親しみがある人だけでなく、初めて印象派絵画に触れる人にも楽しめる内容だ。展覧会を通して多くの人に印象派絵画の美しさ、楽しみ方が広がってほしいと感じた。

 ▽観覧料=一般1500円(前売り1300円)、高校・大学生、65歳以上1000円(同800円)、中学生以下と障害者手帳を持っている人は無料。前売り券は今月19日まで販売(郡山市立美術館で前売り券は販売しない)
 ▽主催=印象派展郡山会場実行委員会(郡山市立美術館、福島中央テレビ、福島民友新聞社)