北陸地方に甚大な被害をもたらした能登半島地震は、5月1日で発生から4カ月を迎える。被災地では今も断水などが続き、復旧が進まない状態の中、棚倉町が今月中旬に、石川県珠洲市に派遣した「災害用トイレトレーラー」が活躍している。給水すればどこでもトイレとして使用でき、被災地では「近くに(トイレが)できて本当に助かる」「24時間使える」などといった声が上がっている。
 「市内で通水しているのは全体の1割程度にとどまっている。壊れたままの家に住む『在宅避難者』が増えている」。現地で災害支援などに当たるNPO法人ピースウィンズ・ジャパンの二宮真弓さん(43)は現状を語る。水が通らないことで宿泊場所が限られ、人手が足りず復旧が進まないのだという。
 通水が進まない中、トイレ不足も深刻な問題になっている。被災地では今も自宅の水洗トイレが使えず、凝固剤を使う簡易トイレや市役所などの仮設トイレを使用せざるを得ない人が多い。トイレを思うように使用できないことで水分摂取を控えるようになり、脱水症状や基礎疾患の悪化などを招き、災害関連死につながることも懸念される。
 町が派遣したトイレトレーラーは市内の旧クリニックに設置され、デイケアの職員や地域住民らに利用されている。四つの個室に洋式便器を整備し、ソーラーパネルなども備え、給水を行えばトイレを使用できるのが特徴だ。
 町はトイレ不足に備え「ふるさと納税型クラウドファンディング」を活用し、3月にトレーラーを県内で初めて導入。今回が初めての被災地派遣になった。
 トレーラーを届けるため被災地を訪れた町住民課の緑川好浩さん(50)は「至る所で道路が壊れていたり、家が崩れたままで、それが日常になっている。トイレも思うようにできない生活の中で、少しでもトレーラーが役に立てばうれしい」と復旧を願う。(伊藤大樹)
 全国でも22自治体
 トイレトレーラーの普及を進める一般社団法人「助けあいジャパン」の担当者は「まだまだトイレトレーラーは足りていない」と現状を伝える。同団体によると、トイレトレーラーを導入しているのは全国で22自治体で、県内は棚倉町のみにとどまっているという。
 同団体は被災自治体の要請を取りまとめ、トイレトレーラーを保有する自治体に派遣を依頼する「災害派遣トイレネットワーク」の運営も担う。トイレ問題はまだまだ認知されておらず、担当者は「設置したトレーラーのメンテナンスの継続など、今回の派遣で分かった課題も解決しつつ、トイレトレーラーの普及を進めたい」と語った。
 本県関係では棚倉町のトイレトレーラーのほか、いわき市が珠洲市の要請を受け、大型トイレカーを避難所の小学校に配置した。