仙台城の石垣は、2022年3月の地震で大きく崩れた。修復工事は江戸時代の伝統工法に現代の技術を融合して、より地震に強い形での復旧を目指している。

合計約35メートルにわたる石垣の崩壊

仙台城の石垣は、2022年3月の地震で2カ所合わせて約35メートルにわたり崩れ落ちた。石垣の変形や土塀の亀裂もあり、加えて前年の地震の被害も拡大、非常に大きな被害となった。

仙台城跡、本丸の北西側の石垣。今回最も被害の大きい箇所だ。
ここでは、石垣の撤去作業をしていた。本格的に工事が始まったのは2024年に入ってからだという。
元の姿に戻すため、まず行われるのが解体。崩落した石を運び出すだけでなく、一見被害のなさそうな部分も石を取り外し、全体を解体していく。

崩落していなくても、地震で石垣全体が変形している箇所を3D計測の技術で見つけ出し、内側の盛り土を整えた上で積み直す。ここで重要になるのが、それぞれの石がどこに積まれていたのか、ということ。その手掛かりとして、東日本大震災からの復旧工事が生かされていた。

東日本大震災で作られたデータを活用

仙台城の石垣は、2011年3月の東日本大震災でも約60メートルにわたり崩落するなど大きな被害を受けた。この時、修復工事とともに石垣全体の調査を行い、一つ一つの石に番号を振ってデータ化していた。そのデータを参考に、復旧工事が行われている。

最も古い石垣は、400年以上前、伊達政宗による仙台城築城当時のもの。
本丸にあった建物は、明治に入り取り壊されたり、火災などで無くなったりしてしまったが、石垣を含む仙台城跡は、1997年から数年かけ仙台市が行った大規模改修工事と発掘調査の成果を通し、2003年に国の史跡に指定された。

「石垣がだんだん高くなっていくという作り方、それだけで伝統技術を表した文化財。基本的には江戸時代の人の作り方を踏襲しながら現代技術を必要なところにだけ入れていくというのが、文化財の考え方。」(仙台市文化財課 長島栄一さん)

江戸時代から活用されている「耐震対策」

解体した石垣を保管する石材置き場で、それぞれの石がどこに積まれていたのか、データをもとに照合する作業が行われている。解体と照合が完了すれば積み直しに入るが、その前に、石垣の内部の修復も行われる。

仙台城の石垣の内側は、盛り土との間に小石が積められている。これは江戸時代の工法で、雨水の排水に優れていることに加え、盛り土と石垣の間で緩衝材となり、地震による振動を吸収する役割もしている。江戸時代の耐震対策の一つだ。

現代の技術を用いた地震対策も

数百年前の技術に驚かされるが、修復工事では、さらに耐震性を高める技術も取り入れる。
その一つが、ポリエステル製のネットを石垣の内側に挟みこむ工法。
東日本大震災の後、修繕工事の際にこのネットを入れた場所は、今回の地震では崩れなかった。2022年の地震で崩落したのはこのネットの補強を行わなかった部分だったということで、その効果は明らかだ。

安心して見られる修復を

「修復は耐震性を持たせたものでないといけないと思う。皆さんが安心して、歴史を感じ、見られるような形で残していきたい。」(仙台市文化財課 鈴木亨さん)

築城当時の技術の粋を集めた石垣は、400年を経て、現代の技術を融合し、今にその姿を遺している。
石垣の修復は2024年度中に終わる予定だ。
(仙台放送)