浦和と日本代表時代を知る上野優作氏が遠藤のプロフェッショナルぶりに太鼓判

 日本代表MF遠藤航は、世界的ビッグクラブのイングランド1部リバプールでアンカーのファーストオプションとして君臨している。18歳の頃からプロの世界でレギュラーを務め、常に冷静かつ理路整然とした物言いでチームの中心を担ってきた男は、共闘した指導者の目にはどのように映っていたのか。浦和レッズと日本代表時代を知る上野優作氏(現FC岐阜監督)に訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 遠藤航は湘南ベルマーレのユースで育ち、17歳だった2010年に湘南トップチームに2種登録されてJリーグデビュー。翌11年にトップチームへ昇格すると、瞬く間に不動のレギュラーに上り詰めた。2016年に加入した浦和レッズでは、16年にルヴァンカップ制覇、17年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝を経験。2018年夏にベルギー1部シント=トロイデンに移籍し、19年夏にドイツ1部シュツットガルト(当時2部)、2023年夏にイングランド1部リバプールと、絵に描いたようなステップアップを果たしてきた。

 浦和時代の2018年4月、大槻毅氏がトップチームを暫定的に指揮した際、暫定的にトップチームコーチを務めた上野優作氏は、遠藤のプロフェッショナルぶりを間近で見た1人だ。

「航はチームの中心でした。湘南から浦和に移籍してきて、そこでメキメキ力をつけて、自分を売りに出している最中の時期。(浦和という日本の)ビッグクラブへ移籍して、そこでタイトルを獲ることに挑戦して、そこから日本から海外へ、そして日本代表での活躍とステップアップしていく姿をマジマジと見ることができました。当時、周りに何か頼るとかではなく、自分自身をしっかり持っていて、常にチームが良くなるようにとか、自分が成長するために毎日選手生活を送っていた印象です。特筆すべきエピソードがあったとかではないですが、とてもプロフェッショナルな選手でした」

 上野氏と言えば、2021〜22年に森保一監督が率いる日本代表のコーチを務め、代表シーンでは22年のカタール・ワールドカップ(W杯)を遠藤とともに戦っている。「最初はコロナ禍もあって話す機会は少なかった」と前置きしつつ、「(2021年の)東京オリンピックにオーバーエイジで呼ばれ、(吉田)麻也の次にキャプテンとなり、チームの中心になっていくのを見させてもらいました」と語る。

世界で活躍する遠藤がいることで「目指せる存在」に

「航はオフ・ザ・ピッチで目立つ感じではないと思います。航のテーブルがいつも盛り上がっているとかいう感じはなかったかな。オン・オフが丸っきり違う顔ではなく、冷静というか、常にプロフェッショナルな態度ですね。カタールW杯では当然、(キャプテンの)麻也を中心にやるなかで、中盤のプレッシャーのかけ方だったり、どういう風に連動してボールを奪うとかの話になると、自分の意見をしっかり持っていました。意見をぶつけ合って、議論をして、1つにまとめて、まとまったことに対してはみんなで実行していこうと。当たり前のプロセスだと思いますけど、当時からそれをやっていたし、おそらく麻也の次は自分だろうという思いはあったはずです。いい日本代表のキャプテンシーを受け継いでいってくれていると思います」

 遠藤はドイツ1部ブンデスリーガで“デュエル王”として名を馳せ、イングランド1部プレミアリーグの強豪リバプールへの移籍も果たした。日本代表でキャプテンを務めていることも踏まえ、そのキャリアは多くの選手や子供たちに希望や目標を与える模範的なものだろう。上野氏も遠藤の活躍に頼もしさを覚えるとともに、エールを送る。

「航に関しては、このまま日本をリードしていってもらいたいし、リバプールでも活躍してもらいたい。彼がいることによって、目指せる存在だと思います。夢を与えていることは間違いないし、これからいろんな選手がJリーグから世界へ羽ばたいていくなかで、目指していく指標になってくれているので、このまま頑張り続けてほしい。日本も世界にどんどん近づいていると思うし、日本代表はてっぺん(世界一)を獲ると言っているので、そこを目指して日本サッカー全体で盛り上げていきたいと思っています」

[プロフィール]
上野優作(うえの・ゆうさく)/1973年11月1日生まれ、栃木県出身。福岡―広島―京都―新潟―広島―栃木。J1通算223試合27得点、J2通算83試合23得点。現役時代は大型FWとして活躍し、2010年から指導者の道へ。栃木でコーチ、ヘッドコーチ、アカデミーダイレクター兼ユース監督、浦和ではユースコーチ、育成ダイレクター兼ユース監督、トップチームヘッドコーチ、日本代表コーチを経て、2023年から岐阜の監督を務める。

FOOTBALL ZONE編集部