VfBシュトゥットガルトでプレーした元サッカー日本代表DF酒井高徳と同クラブで指導者や通訳を歴任した河岸貴氏。両者の親交は10年以上も続き、現在でもフットボール談義を長時間交わす間柄だという。今回は、シーズン開幕前に行われた両者の対談の一部を抜粋してお届けする。(取材:Footballcoach、構成:編集部)
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●「日本の指導者は相変わらず停滞している」

 第1回では「BoS理論」を軸に、昨季の明治安田J1リーグを制したヴィッセル神戸の戦いぶりを振り返り、第2回ではブンデスリーガでプレーした酒井自身の体験をもとに、フランク・リベリーら世界有数のアタッカーとの対峙から、プレッシングの繊細さに触れた。そして、話題はサッカー日本代表や日本の指導者へと移っていく。

 河岸貴氏は2004年にドイツへ渡り、09年からVfBシュトゥットガルトで指導者を務めた。11年1月に岡崎慎司が同クラブに加入すると、トップチームへ活躍の場を移し、15年6月まで同クラブに在籍してスカウトなどを歴任している。ドイツで指導者としての道を切り開いた河岸氏はこう切り出す。

「海外に行くことが目的じゃなく、むこうで活躍するのが重要で、そういった成功している選手も多々出てきている中で、指導者は相変わらず停滞しているのかな」

 遠藤航や冨安健洋、久保建英や三笘薫など、世界最高峰の舞台で活躍する選手は、酒井や河岸氏がシュトゥットガルトにいた時期と比べれば格段に増えた。ただ、それと比べると、指導者として海外の第一線で活躍する日本人は少ないことに河岸氏はもどかしさを感じる。これには酒井も同調する。

●指導者は「具体的に何をしていますか?」

「Jリーグで勝って自分がヨーロッパに引き抜かれることまで考えている監督はどれくらいいるのかなと正直思います」

 酒井の言葉には決して批判的な意図はなく、「指導者に世界を目指してほしい」と言う願望から出た言葉だった。「選手たちが世界を目指してワールドカップも本気で獲りにいくとなっているんだったら、今後はやっぱり世界に進出したいと思っているコーチ、監督がどんどん出てくることが日本サッカーを1歩、2歩、あるいは3歩になるんじゃないかと思う」と述べた。

 河岸は酒井の意見に同意しつつ、指導者の立場から選手に世界を目指せという指導者に対して「具体的に何をしていますか?」と投げかける。

「言語は大事だから、まず英語は喋れますか? ただ(現地に)行って見て、見たから大丈夫じゃない。(選手に)夢を目指せと言っていて、自分たち(指導者自身)が努力していないんじゃないか。もっと学んで、自分が世界基準になっていくのがものすごく大事だなと思います」

「学んだ時期がドイツにいた期間だった」と振り返る酒井は、「残酷な話ではあるけど、経験しないと分からないというのが実際のところ」と言う。10代の頃からの自身の体験をもとに、「学ぶことと考えることは絶対にやって欲しい」と未来のサッカー選手たちへアドバイスを送る。「なぜうまくいかなかったのか」「どうしたらうまくいくのか」の繰り返しの中で、「自分の引き出しと経験を強くしていく」と語った。

(取材:Footballcoach、構成:編集部) 

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