●これまでとは一味違う、守備に強みを見せるシーズン

プレミアリーグ第32節ブライトン対アーセナルが現地時間6日に行われ、3-0でアーセナルが勝利した。試合終盤には相手にボールを持たれる時間が長くなったものの、決定的な3ゴール目を奪って完勝。いまのアーセナルにはこれまでとは異なる強さがある。(文:竹内快)
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 今季のアーセナルは「最強」ではないだろうか。

 ここまで31試合22勝5分4敗の好成績で優勝争いに参入し、その得点数はリーグ最多の75ゴール。特に2024年からの得点力は凄まじく、ブライトン戦を含めてリーグ戦11試合で38ゴールを奪っている。

 しかし、その華やかな攻撃だけで最強だと考えるのには無理がある。優勝を争うマンチェスター・シティやリバプールだって、圧倒的な破壊力を持った攻撃が魅力的だ。それどころか、スカッドに揃う選手を比較すればアーセナルよりもライバルたちの方が、攻撃陣が持つ脅威は大きいように思える。

 ではなぜ、ミケル・アルテタ体制5年目となった今季のアーセナルが「最強」だと言えるのか。その理由はリーグ最高レベルの守備の堅さにある。ウィリアム・サリバとガブリエウ・マガリャインスのセンターバックコンビはここまでわずか24失点しか許しておらず、先日行われたシティ戦でもクリーンシートを達成。これまでとは一味違う、守備に強みを見せるシーズンとなっている。

 新たな武器となった堅固なディフェンスは、もちろんブライトン戦でも発揮された。いまのアーセナルの選手たちは、狂気的なまでに「無失点へのこだわり」を持っているように見える。

●全員に共有された守備の意識
 ブライトンはオレクサンドル・ジンチェンコが守るアーセナルの左サイドを起点に攻撃を展開してきた。これに対してアーセナルはFWカイ・ハフェルツとMFマルティン・ウーデゴールを前線に配置した[4-4-2]で守るが、ホームチーム得意の引き付けてからの縦パスや個によるドリブル突破でハイプレスを掻い潜られ、深い位置までボールを運ばれるシーンも。シモン・アディングラを中心としたホームチームの速攻の脅威は小さくなかった。

 それでもブライトンの枠内シュートをわずか2本に押さえ込み、3-0の完勝に成功したのは、運動量とチームディフェンスの練度で相手を上回ったからである。誰一人として守備に手を抜く選手がいなかった。

 カウンターを受けると前線の選手がトップスピードでペナルティエリア手前まで戻り、中盤の選手と共に密集状態を作って中央のパスコースを封殺。ブライトンはサイドにボールを振ってアーセナルのブロックをワイドに引き延ばすことを狙ったが、アウェイチームはそれに全くラグの無いスライドを見せて対処した。

 これに大きな役割を果たしたのがジョルジーニョだ。32歳のイタリア代表MFはフィジカル勝負には不安があるものの、味方と連動した守備はトップクラスのクオリティを持っている。[4-4-2]での守備ではライスのタイミングに合わせて高い位置を取って、相手に長いパスを蹴らせて味方がボールを回収する起点に。[4-4-2]よりさらに引いて守る[4-5-1]では、両CBの空けたスペースを埋める役割や、マイナス方向へのクロスを警戒する役割を担った。流動的な動きで1つのスライムのように見えるアーセナルのブロックには、ジョルジーニョの細かな動きが欠かせない。

 アーセナルの2点リードで迎えた試合終盤には、選手交代によってブロックの堅さがさらに増すことになる。ブライトンに狙われていたジンチェンコに代えて冨安健洋を、サイドにはレアンドロ・トロサールとガブリエル・マルティネッリを投入。サイドの攻守における運動量は維持されるどころか、さらに増して相手を苦しめた。最終的に、アーセナルの選手たちの「全員守備」の意識はトロサールの美しいゴールへと繋がっている。

●いまのアーセナルには死角がない

 無失点への強いこだわりがよく表れていたのが、アディショナルタイムにジョアン・ペドロにシュートを打たれたシーンだ。マガリャインスが左足でシュートをブロックした時、彼の周りにいたチームメイトたちはまるでマガリャインスがゴールを決めたかのように祝福した。

 3-0でリードしていたのにも関わらず、シュートブロックを祝う選手たちに対して、アルテタ監督は「3-0でのチームの反応を見て、コーチ全員が本当に嬉しく思っている。選手たちがどれだけタイトルを欲しているか、そして1球1球に集中しているかが伝わってくるからね」(『football.london』)と語った。指揮官が話した通り、守備に集中するアーセナルの選手たちが見せるセカンドボール1球1球への執着は尋常ではない。「どれだけゴールを奪ったとしても、絶対に相手にゴールを許さない」という信念がピッチに立つ選手たち全員に共有され、実際の守備に表現されている。

 いまのアーセナルが自陣に引いて守った時、それを崩すことができるチームはそう多くはないだろう。そして、ボールを保持して攻め立てる強者的なサッカーも、しっかり守ってカウンターからチャンスを作る弱者的なサッカーも、両方の戦い方ができるチームに死角はない。そういう意味で、現在のガナーズを「最強」だと表現しても間違いではないはずだ。

(文:竹内快)

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