お金持ちの人はきっと毎日手の込んだご馳走を食べていて、ファミレスや回転寿司には行かない、というイメージを持っている人も多いのでは? 今回はそんな先入観が裏目に出て、関係が気まずくなってしまった経験のある、私の知人Eさんに聞いたお話です。

超お金持ちのママ友とランチ

Eさんは当時、子どもが同じ幼稚園に通っているママ友とよくランチに出かけていました。

ランチのお店はその日の気分で、車で10分ほどのショッピングモールまで足を伸ばしたり、幼稚園の近くのファミレスで集まったり。

そんな日々が続いていたある日、ママ友のひとりが近所でも有名な超お金持ちの奥様、Sさんを連れてきたのでした。
「今日はSさんも一緒にいい?」
「もちろんいいよ!」
Eさんも他のママ友も、目を輝かせてOKしました。

何を隠そう、Sさんというのは地元でいくつもビルやマンションを保有している有名な大地主の娘さんで、正真正銘のお嬢様。

Eさんたち一般家庭の奥様に比べると、ひと目でお金がかかっているのがわかる服装をしているため、幼稚園のママたちの間では憧れの存在でした。

住んでいるのはお城のような豪邸ですし、有名人の知り合いも多く、まさしく雲の上の人と言ってもいいお方。

しかし「子どもを近所の友達と遊ばせたい」という理由で、私立ではないごく普通の幼稚園に子どもを通わせているのでした。

そんなSさんと仲良くなりたい! と思ったEさんは、自らランチのお店探しをすると名乗り出たのでした。

激安チェーン店の前で

Eさんはレストラン検索アプリを開き、ランチのお店を探し始めました。
「ねえ、ここはどうかな?」
アプリで見つけたのは、リーズナブルなお値段でコース料理が食べられるイタリアンのお店でした。
「いつも行くとこよりはちょっとお高いけど、Sさんが一緒だしね!」
Eさんがそう言うと、Sさんはちょっと困った顔をしつつも頷きました。もっと高級店が良かったのかな、と不安になるEさん。
「普段Sさんが行ってるようなとことは、多分比べものにならないけど……」
「ううん、いいの」
Sさんはそう言って微笑みました。

イタリアンのお店は幼稚園の近くにあるため、皆ぞろぞろと歩きながらお店に向かいます。
すると途中で某激安イタリアンレストランチェーン店の看板が現れました。

「Sさんはこんなとこで食事なんかしないよね?」
Eさんが言うと、Sさんは顔を赤くして困った顔。きっと行ったことないんだろうな、と他のママ友と小声でささやきながら、Eさん一行は目的のイタリアンのお店に到着しました。

なぜか避けられて

その日のランチはとても和やかに終わりました。

しかしそれからEさんは、Sさんと幼稚園で顔を合わせてもどこかよそよそしく、避けられているような気がしていました。
「私、何か気に障ることしたのかな……」
イタリアンでのランチ会に同席していたママ友のひとりに尋ねたEさんは、まさかの真実を知らされることになります。
「あのね、Sさんは〇〇(激安イタリアンチェーン)が大好きなの。週に1回は旦那さんと子どもと一緒に行ってるんだって。それ言い出せなくて、気まずかったみたい」
「ええー! そうなの?」
ママ友がSさんに聞いたところによると、あまりにも「お金持ちの奥様」扱いされるのが心苦しく、もうランチ会には参加したくないとのこと。

「なんか悪いことしちゃったな」
EさんはSさんをただお金持ちの奥様としか見ていなかったことを反省しましたが、結局子どもが卒園するまでSさんとは疎遠になったままだったそうです。

Eさんも悪気はありませんでしたが、「お金持ちだからチェーン店に行かない」といったように先入観を持って人と接すると、時には人を傷つけてしまうこともあります。人は見かけだけでは判断できないこともあるので、関係が壊れてしまわないように注意しましょう。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子