今注目の書籍を評者が紹介。今回取り上げるのは『お金の知識があるだけで あなたが見られるはずのとびきり輝く世界について』(安藤真由美 著/日経BP)。評者は書評家の東えりかさんです。

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自分のために使いたいなら学び、貯め、増やそう

2024年3月4日、東京株式市場で日経平均株価が4万円を超えた。34年ぶりに最高値を更新したと報道ばかりが浮かれている。今年始まった新NISAへの勧誘も喧しい。でもNISAって何? と金融庁のHPを見ても、投資して利益が出た金額に税金がかからない仕組み、くらいしかわからない。

それなのに老後資金は2000万円必要だと言われたり、高齢者の医療費窓口負担が大きくなったり、お金の不安は付きまとう。

そもそも今まで、お金について深く考えることがあっただろうか。昭和生まれは「お金は卑しいもの」と言われ、お金や経済の仕組みを教えてくれる人はいなかった。まして家庭に入った女性は、家計簿はつけても大きなお金の管理はわからない人も多かったはず。

本書は「貯める」「稼ぐ」「増やす」という3つの方法から、お金に関して自分の得意な分野を見極めようという本だ。

「お金」は自分にとってどれくらい必要で、どのように使うべきなのか、という根本的な問題を考えることから始めていく。新NISAだろうが、株への投資だろうが、先立つものがなければ始まらない。だれにも頼らず、自分だけの資金をもつこと、まずはそこからだ。

既に賃金を得ている人が気になるのは今まで縁のなかった「投資」に関すること。どうもバブル崩壊やリーマン・ショックを思い出して、博奕のようなイメージが付きまとう。

それを払拭すべく「投資とは何か、どうすれば始められるのか」から説明してくれるのがありがたい。投資はそんなに簡単ではないと釘を刺されたのち、ならば、と学ぶことの必要性が説かれ、具体例が示される。

お金だけが幸せではない。けれど、ないがゆえの苦しさを経験している人なら、今からでも遅くない。「自分のためだけに使うお金」の増やし方を勉強してみたらどうだろう。