打率.209、敗戦につながる失策が引き金も「トータルの判断」

 阪神・佐藤輝明内野手が、15日に出場選手登録を抹消された。35試合出場で打率.209、3本塁打と打撃が振るわず、14日の中日戦(豊橋)で敗戦につながるエラーを犯したことが直接の引き金となった。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「もう1度キャンプをやり直すくらいのつもりで取り組む必要がある」と厳しい見方を示す。

「あのエラーが2軍落ちの原因というわけではなく、トータルでの判断でしょうから、仕方ないでしょう」と野口氏。「佐藤輝自身は一生懸命やっていたのでしょうが、打撃で同じような空振り、同じような凡打を繰り返し見せられる首脳陣、ファンにどれだけ伝わるものがあったかというと、クエスチョンマークがつく状態でした」と言う。

 2軍に合流した佐藤輝は早速、鳴尾浜臨海野球場で約50分間、289球のノックを受けたと報じられている。2月の沖縄・宜野座キャンプで、佐藤輝が何度も特守に取り組み打球を受け続ける姿を、視察に訪れた野口氏は見ていた。

「キャンプ中はいい打撃をしていましたし、オープン戦でそこそこ打った(17試合出場、打率.270、3本塁打)のは、守備練習のお陰だと思います」

 ノックを受ける効果は、守備がうまくなるだけにとどまらない。「打撃不振を克服しようと、一生懸命バットを振り込むと、下手をすれば余計に悪い癖がついてしまうこともあります。その点、内野守備でしっかり股を割って捕ることを繰り返せば、自然に下半身が鍛えられます。鍛えられた強さを、打撃に転換すればいい。マイナスになることは絶対にありません」と説明する。

「もう1度下半身を鍛え直すことが必要でしょうし、これを機にタイミングの取り方、投手の配球についても勉強した方がいい。やることだらけでしょう」と付け加えた。

「昨年並みの攻撃力取り戻せば抜け出せる」

 もちろん、佐藤輝が将来の阪神の屋台骨を支えていく人材であることに疑いはない。野口氏は「近本(光司外野手)、大山(悠輔内野手)クラスの、怪我以外では外せない選手にならなければいけない。そうなっていく途中にいるのが、佐藤輝であり、森下(翔太外野手)です」と指摘する。

 セ・リーグは15日現在、首位から最下位までが4.5ゲーム差にひしめく混戦。阪神は首位・巨人に0.5ゲーム差の2位につけている。

 野口氏は「阪神の攻撃陣は佐藤輝以外にも、大山(38試合出場、打率.210、3本塁打12打点)ら、数字が上がっていない選手が多い。それでも、この位置にいるのです。昨年並みの攻撃力を取り戻せれば、じわじわと混戦を抜け出していくのではないかと思います」と予測。「絶好調でなくても、通常通りにさえなればいいのです」と強調した。

 投手陣では、左腕の伊藤将司投手が今月11日のDeNA戦で5回途中7失点KOされ、2軍落ちとなった。「投手陣に関しては、2軍で出番を待っている選手がたくさんいます。『伊藤将にじっくり2軍で調整させるだけの余裕がある』と言えます」と野口氏は見ている。

 昨季2位に11.5ゲーム差をつけて独走Vを果たした阪神。佐藤輝の復調と1軍復帰が、実力発揮の足がかりとなるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)