Image: Netflix

2024年3月21日からNetflixで配信が開始されたドラマ『三体』。世界中で大ヒットを記録した劉慈欣(リウ・ツーシン)による同名小説の映像化ということもあり、配信開始前から話題となっていました。

今回のNetflix版『三体』では、メインとなる舞台は中国からイギリスへと変わり、主人公を始めとした主人公の設定が変更されています。先に中国で公開されていたテンセント製作版のドラマはかなり原作に忠実でしたが、Netflix版ではよりグローバルな規模感を見せるための変更が加えられた結果、ストーリーの進行にも変化がありました。

今回のドラマでは原作の『三体』第一巻までが描かれています。原作の違いも踏まえつつ、Netflix版『三体』のショートレビューをしていきます。

マルチ主人公で挑む宇宙規模の戦い

公式ではストーリーは以下のように紹介しています。

1960年代の中国でひとりの若い女性が下した重大な決断が、時空を越えて現代の科学を担う研究者たちに大きな影響を及ぼすことに―。

自然の法則が明らかになっていくのを目の当たりするなか、再会した5人の級友たちは、人類史上最大の脅威に立ち向かうべく力を合わせることになる。

中国の文化大革命を背景に起きたできことがストーリーの起点になるところは原作と同じです。しかし、今回のドラマでは、ストーリーの中心となる現代で主人公にあたる人物が複数存在する点が原作との大きな違いとなっています。

これにより必然的にストーリーが変わっていくわけですが、このようなマルチ主人公によって、原作の主人公である汪淼(ワン・ミャオ)が担っていた部分を複数人が分割するようになったことが1番大きな違いといえるでしょう。

ナノマテリアル開発、カウントダウンの表示、宇宙の明滅、VRゲームのプレイ、三体協会の集会などなどのできごとが並行して進行していきます。このあたりは比較的あっさりとした描写が多く、キャタクター像なども含めて賛否両論の評価となっている部分ですね。個人的にも違和感を感じましたし、登場人物が誰に当たるのか、といった部分も多少戸惑いました。

とはいえ、約1時間×全8話という制限されたなかで、マルチ主人公をうまく動かしてストーリーの抑揚も押さえている点を考えれば、うまく仕上がっていると感じました。

原作未読の方にこそ観てほしい

Netflix版『三体』で特筆すべき点は、やはり全体的な世界観(あるいはディテールも)のデザインや超自然的な現象を見せる映像表現のクオリティーの高さはあげられると思います。

その一方で、「三体問題」「自然/生態系破壊」「急進する科学文明」「仮想現実」「高次元生命体の存在と接触」などなどが絡み合い、ハードSF要素とサスペンスやドラマがうまく混ざりながら構成されている『三体』の圧倒的な作品性は、今回のドラマでは軽めになっているのも確かでしょう。

個人的には、原作において象徴的かつ印象的な射撃手(シューター)と農場主(ファーマー)の"SF"仮説が登場しなかったことはかなり残念ではありました。

さて、Netflix版ドラマは省略されている部分や改変によって軽くなっている印象を感じる一方で、並行して進むストーリーがドラマとしてのテンポを良くしていて見やすく、わかりやすいものになっているとも感じます。このドラマは"三体入門"と位置づけるような作品ではありませんが、原作未読でも楽しめることは間違いないでしょう。

また、今回が原作第一巻までだったこともあり、おそらく今後この『三体』シリーズは続くと思われます。最後のエピソードを観た後で、より規模が増していく『三体』の世界を最後まで観たいなと感じました。よりオリジナルな展開になっていくとしたら、それはそれで楽しみたいと思いますね。

Netflixシリーズ「三体」独占配信中

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source: Netflix, WOWOW, YouTube