久々に見た光景でした。高鳴る胸の鼓動を感じながら、無意識に汗ばんだ右手をグッと強く握りしめたまま10分間、試合開始前のその景色を眺めていました。

 4月13日、ユアテックスタジアム仙台で行われたJ2ベガルタ仙台とモンテディオ山形の「みちのくダービー」。スタジアムには、1万8千人近くの観衆が詰めかけました。チームカラーのゴールドとブルーに鮮やかに彩られた壮観な光景。記憶の中では、すでにセピア色となってしまっていた新型コロナ禍前の2019年の満員のスタジアム。この日は、その時の記憶の上に華やかに色付けされ、リアルとしてよみがえった心震える圧巻の景色でした。

 選手入場時にスタジアムに鳴り響く、ベガルタ、モンテディオの両サポーターによる入場のアンセム(応援歌)が実況用のヘッドホン越しに聞こえてきたときは、高揚して上擦らないよう自分の実況の声を抑えるのに必死でした。

 東北のチーム同士のダービーマッチはいくつかありますが、ここまで苛烈に盛り上がるのは「みちのくダービー」だけです。歴史が最も長く、ライバル心が強く、地域が隣接しているチーム同士であることに起因しています。クラブも選手もサポーターも、内容より結果を求めて戦います。

 実際、決勝ゴールを決め勝利に導いたベガルタのMF相良竜之介選手はヒーローインタビューで『ダービーは勝ってなんぼ!』と声高に叫び、スタジアムは歓喜で揺れました。一方、敗れたモンテディオは、試合後、サポーターにあいさつに訪れた選手や監督に水を浴びせる事態となりました。決して許される行為ではありませんが、この屈辱を絶対忘れず、次回の対戦での雪辱の糧にしてほしいと願っています。こうした対戦を繰り返し、熱を帯びながらダービーの歴史が連綿と続いていくのだと思います。

 仙台に住んで間もなく30年、ああ、仙台に来て良かった! と思える、私にとっては何年たっても心躍る大切なダービーです。