現代美術作家の村上隆さんが18日、自身に密着したNHKのドキュメンタリー「フロンティア 夢見る“怪物”村上隆」(BSP4K=18日・後10時/BS=23日・後9時)の取材会を東京・渋谷の同局で行った。

 京都で開催中の8年ぶりの個展「村上隆 もののけ京都」(京都市京セラ美術館新館東山キューブ、9月1日まで)の制作現場に密着した内容。昨夏から今年2月まで約半年間カメラを回し、独自の工房システムやAIを取り入れた創作技法の舞台裏や、ふるさと納税を活用し財源を確保する新たな取り組みなどにも迫った。

 村上さんは「ドキュメンタリーにはどうしても出たくなかったんですけど、今回僕の方からドキュメンタリーをお願いしたんです。それは庵野秀明さんのドキュメンタリーを見て、庵野さんが最初から最後までめっちゃ不機嫌だったんですよね。これで成立するんだったら大丈夫だったと思って」と密着を許諾。制作を担当した京都放送局の日比野和雅氏によると、ディレクターは作品制作中の呼びかけなどを控えるなど、ありのままの姿を撮ることに力を注いだという。

 ドキュメンタリーの中では制作に煮詰まり「65%ぐらいは描きたくない作品」と本音を漏らすシーンも。行き詰まったなかで作品を生み出す原動力について尋ねられると「若いアーティストには『ドラゴンボールを見て』って言うんですよ。悟空が修業してる『精神と時の部屋』は、負荷をかけて短時間で、下界とは全然違う時間軸でやっている。芸術の修業っていうのは時空をねじ曲げて越えていくっていうこと。追い詰められている状況を作るのが努力ポイント」と次元を超えるような集中の重要性について語った。

 そのうえで「いま、大谷翔平さんは原動力が満載だと思います。大谷さんは無心になっていると思うんですよ。そういう意味で水原一平さんはいい仕事をしましたよ。過去が清算されたんですよ。未来しかない」と断言。「僕も会社で350人を抱え2、3日前にも経理から『会社が潰れそうです』と言われプレッシャーです。全然描きたくないけど、潰れるんだったらいま残っている38枚の注文を描かないといけない。スーパーアスリート、スーパー芸術家っていうのは、自分でどうコンディションを整え、どう毎日のルーチンをやって、どういう自分が無心になれるか、ということに集中しているんだと思います」と語った。