東京都は19日、築地市場跡地(中央区、約19ヘクタール)の再開発「築地地区まちづくり事業」を担う事業予定者に、三井不動産や読売新聞グループなど11社で構成する企業グループを選定したと発表した。野球やサッカーなどのスポーツに加えてコンサートや展示会なども開催できる約5万人収容のマルチスタジアムを中心に、商業施設やホテル、オフィスなどを配置する予定。一部施設は2029年度に先行オープンし、30年代前半の開業を目指す。

 19日に事業予定者に選定された三井不動産や読売新聞グループなどの企業グループが行う築地市場跡地(中央区、約19ヘクタール)の再開発は、「まちづくり」の名前が付いているように、マルチスタジアムだけでなく、周囲を一体化して行われる。その根底にあるのは、「東京都の国際競争力向上」への期待だ。

 スタジアム以外に予定されているのは、商業施設やホテル、オフィスのほか、MICE(マイス=企業や団体などによる会議や展示会などのビジネスイベントの総称)施設など9棟。観光客だけでなく、高度人材を築地地域に呼び込むことをもくろむ。

 その大きな力になると考えられるのが、市場時代から続く「食文化」を生かしたまちづくり。市場が豊洲に移転した現在も、築地場外には多くの外国人が詰めかけており、来日客にとって同所は魅力のある場所として注目を集めている。その“ブランド”を生かし、築地場外と連動したフードホールや食に関する研究機能を持つ施設を置くことで、築地の食文化の継承を図る。

 計画では、同地域が「陸・海・空を結ぶ拠点」となることを目指す。来年開催が予定されている大阪・関西万博で「空飛ぶクルマ」が目玉とされているように、次世代型交通は今後の社会において重要視されることは確実。空飛ぶクルマの実用化を見据えた発着場や、隅田川沿いに舟運施設を設けるほか、東京と臨海部を結ぶ「臨海地下鉄」の新駅や、首都高の出口に接続するターミナルも備える予定となっている。

 都は1999年に築地市場の移転方針を決めたが、反対運動や豊洲の土壌問題などのため延期となり、18年にようやく移転。再開発は22年11月に事業者募集要項を公表し、23年8月に提案を受け付けた。2グループから提案があり、審査委員会が審査。24年度末に都と事業予定者による基本協定が締結され、25年度には先行するにぎわい施設の着工を予定している。都は事業者に対し、一般定期借地権で建設期間を除いて70年間貸し付ける。