6日のプロボクシング東京ドーム興行で勝利した井上尚弥(31)ら大橋ジムの世界王者3選手が7日、横浜市内の同ジムで一夜明け会見を行い、バンタム級両王者は日本人が4団体王座独占となった同階級でのサバイバルへ意気込んだ。WBO新王者の武居由樹(27)は初挑戦初奪取を呼び込んだ尚弥との“TKO”寸前に追い込まれたスパーリング内容を激白した。

 武居が最終12回の危機をしのぎ、判定勝ちした前王者・ジェーソン・モロニー(33)=オーストラリア=との激闘について“最大の勝因”を明かした。大橋会長が試合後会見でポロリと明かした尚弥とのスパー。詳細が一夜明け会見で明かされた。国内ジム100人目の世界王者となった元K―1王者は「ボコボコ、メタメタに。格闘技人生で一番やられた」と苦笑い。大橋会長も「武居、(試合ならレフェリーに)止められちゃうぞ。頑張れ、頑張れといったスパーリング。初めて見た」と本番さながらだったと明かした。

 世界初挑戦まで1か月を切った4月の前半に10ラウンドを敢行。「僕から一方的に(依頼した)」と武居。大舞台の最終ラウンドにモロニーの猛攻を食らい、ダウン寸前に追い込まれたが、勝ち切れたのは身近に世界最高の練習相手がいたからこそ。尚弥は「マス(ボクシングの形式的な練習)に毛の生えたようなもの」と笑顔で控えめに語ったが、武居にとっては、20年にモロニーを7回KOに沈めた尚弥を相手に、これ以上ない修羅場を試合前に体験できた。大橋会長も「12回に同じ展開になった。あの経験が生きた」と振り返った。

 武居の初防衛戦は同級1位で元WBC、元WBA世界暫定王者のレイマート・ガバリョ(27)=フィリピン=との指名試合になる見通しで、9月の対戦で交渉に入っている尚弥―グッドマン戦と同じ興行になる可能性がある。「ここからスタートライン。また次の目標へ向かって突っ走るだけ」。目標としていた世界王者になっても、最強王者・尚弥の傍らでチャレンジャー精神を持ち続ける。(田村 龍一)

 ◆指名試合 王者に対し、王座認定団体が指名した挑戦者を相手に一定期間の間に義務付けられる防衛戦。通常の指名挑戦者は認定団体が定めたランキング1位の選手。