能美、加賀市の各消防本部は救急搬送の迅速化と救命率の向上を目指し、9月からマイナンバーカードを活用した実証実験に乗り出す。救急隊員が健康保険証機能が入ったカードを専用端末で読み取り、患者の通院や薬の処方歴を医療機関と共有して搬送先を決める仕組み。現場の隊員が役割分担し、カードの情報把握や傷病者の観察に取り組むことで円滑な処置や治療につなげる。

 実証実験は総務省消防庁のモデル事業として能美市は10月末、加賀市は11月中旬ごろまで実施する。

 具体的には、救急車で患者を搬送する隊員が「マイナ保険証」を所持しているかを確認。同意を得た上で専用端末でカードを読み取り、かかりつけ医や健康診断結果などの情報を確認した上で搬送先を決定する。

 意識がないなどの重篤な患者を救急搬送するケースも想定。症状や通院歴などの質問に答えられず、本人から同意が得られない場合は、国の方針に沿って隊員の判断でカード情報の確認ができるよう運用される見通しである。

 能美市内では救急救命士を含む隊員3人が救急車に同乗して活動に当たっており、全隊員がカード情報を確認できるようにする。2022年の実証実験にも参加した加賀市は救急隊全4隊で対応する。

 能美市は昨年度、1人暮らしの75歳以上の高齢者や障害者など要支援者のかかりつけ医や服薬情報などの「福祉見守りあんしんマップ」をデジタル化した。救急活動についても同意が得られた要支援者約2千人の情報がタブレット端末で共有されており、同市消防本部警防課の担当者は「搬送時間の短縮、スムーズな救急対応につなげたい」と話した。